会長声明 2014年07月04日 (金)
集団的自衛権行使容認の閣議決定に強く抗議する会長声明
1 政府は,2014年7月1日,憲法第9条に関する従来の政府解釈を変更し,一定の要件の下に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。
当会は,2014年4月30日付け「集団的自衛権の行使容認に反対する会長 声明」において,集団的自衛権の行使容認は憲法第9条の文言からは導き得ない解釈であることを指摘し,政府がそのような解釈に基づいて権力を行使することは,憲法秩序の破壊であり,基本的人権を保障するため,憲法によって国家権力を制限するという近代立憲主義の否定であって,絶対に許されないことを強く主張した。にもかかわらず,政府が集団的自衛権行使容認に踏み切ったことは,実質的には憲法改正手続によらない第9条の変更で,違憲であり,当会は強くこれに抗議する。
2 今回の閣議決定では,解釈変更の理由について,日本を取り巻く安全保障環境の変化をあげ,「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,日本の存立が脅かされ,国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に,必要最小限度の実力を行使するのは自衛の措置として憲法上許容されると判断するに至った」と説明している。
しかしながら,憲法第9条が,国際紛争を解決する手段としての武力の行使を永久に放棄していることはその文言上明らかである。したがって,わが国に対する外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされている場合にこれを排除する個別的自衛権の行使は認められるとしても,わが国が直接攻撃されていないにもかかわらず外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利である集団的自衛権の行使を容認することは,明らかに憲法解釈の域を超えている。また,現在の安全保障環境が,冷戦時と比較しても,憲法第9条の改正を必要とする程度に悪化しているとの論拠も十分に示されていない。
3 よって,当会は政府に対し,集団的自衛権の行使を容認した今回の閣議決定に強く抗議し,これに基づく関連法令の整備を行わないことを求める。
2014年(平成26年)7月4日
福井弁護士会
会長 内 上 和 博