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声明・意見書

会長声明 2014年04月30日 (水)

集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明

1 日本国憲法は,前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われらの安全と生存を保持しようと決意した」と平和的生存権を宣言した。
さらに,憲法第9条は,戦争を永久に放棄し,戦力を保持せず交戦権も認めないとする恒久平和主義を宣言した。憲法前文や憲法第9条は,非戦・非軍事の恒久平和主義を宣言した点で世界の憲法のなかでも先駆的な意義を有しており,武力紛争が依然として絶えない国際社会において,より一層その存在意義を増している。

2 ところが政府は,憲法9条に関する従来の政府解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認する動きを加速している。報道によれば,今夏までに集団的自衛権行使容認の新たな政府解釈を閣議決定し,秋の臨時国会にはこれに対応して集団的自衛権の行使を具体化する自衛隊法等の改正を行う予定とされている。

3 憲法第9条に関する従来の政府解釈によれば,同条は,他の国または国に準じる組織との間の国際紛争を解決する手段としての武力の行使はこれを一切禁じているものの,憲法前文の平和的生存権や憲法第13条の国民の幸福追求権の尊重の趣旨に鑑み,外部からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされている場合にこれを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することまでは禁じていないものと解釈され,憲法第9条のもとでも一定の要件に該当する場合,自衛権の発動は認められるとされてきた。
 しかし,集団的自衛権とは,自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利であり,上記要件を充たさず,憲法第9条の文言から,その行使は認められないというのが従来の政府解釈であった。

4 この政府解釈は,戦争の放棄,軍備及び交戦権の否認を明文で定めた憲法第9条と国家の自衛権との,ぎりぎりの調整を図ろうとするものである。
 したがって,この政府解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することは,憲法第9条の定める戦争の放棄,軍備及び交戦権の否認の意義を没却するものといわざるを得ない。
 憲法第9条は,第2次世界大戦における国内外における数千万もの尊い人命の犠牲と計り知れない人々の痛苦の体験のもとに生み出された,日本国憲法の基本原理であり,これを政府解釈の変更によって事実上葬り去ることは,絶対に許されない。

5 また,日本国憲法は,いうまでもなく近代立憲主義に基づく憲法であり,主権者たる国民が,国家の権力が暴走し国民の基本的人権が損なわれることのないよう,国家の権力を縛るためのものである。憲法を最高法規と定め(第10章),憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし(第98条),国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務を課することで(第99条),政府や立法府を憲法による制約の下に置こうとする諸規定は,こうした日本国憲法の性格を示すものである。
 したがって,憲法第9条の文言からは導き得ない解釈を政府が行い,それに基づいて権力を行使することは,憲法秩序の破壊であり,近代立憲主義の否定であって,絶対に許されない。

6 よって,当会は,政府解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに対し,強く反対する。

2014年(平成26年)4月30日
福井弁護士会
会長 内 上 和 博

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