意見書 2020年11月26日 (木)
犯罪被害者等支援条例制定に関する意見書
福井県知事 杉 本 達 治 殿
〒910-0004福井市宝永4丁目3番1号サクラNビル7階
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FAX 0776-23-9330
福井弁護士会
会長 八 木 宏
報道によれば,貴県は,本年度中に,犯罪被害者等支援条例を制定する予定であるとのことですので,これに関し,下記のとおり意見を申し上げます。
記
1 意見
(1) 福井県条例の制定は,犯罪被害者等基本法の実現のため必要であって,極めて有意義である。
(2) 福井県条例の制定にあたっては,支援団体等の意見を十分に聴取すべきである。
(3) 福井県条例の制定にあたっては,先進的な他の都府県の条例などを参考とし,福井県の状況に応じた施策を規定すべきである。
(4) 福井県条例においては,支援団体等の意見を聴いて,犯罪被害者等支援推進計画を策定するなど,条例の実効性を担保するような規定を設けるべきである。
2 理由
(1) 条例制定の意義
犯罪被害者等基本法が基本理念として掲げる「個人の尊厳が重んじられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利」とは,犯罪被害者が,個人の尊厳と人格価値の尊重を宣言した憲法第13条と,その尊厳にふさわしい生活を営む権利を保障した憲法第25条の権利を有することを確認的に宣言するものと解すべきである。
そして,犯罪被害者等基本法は,国に対し,犯罪被害者のための施策を総合的に策定し実施する責務を負わせるとともに(同法第4条),地方公共団体に対し,地域の状況に応じた施策を策定し実施するべき責務を負わせている(同法第5条)。
地方公共団体は,地域の住民等の問題やニーズを把握し,地域の特性を生かしながら,速やかにきめ細やかな政策を実施することが可能な,住民にとって身近な行政主体であり,犯罪被害者支援の分野においてもその役割は重要である。
また,地方公共団体における犯罪被害者の支援施策について,法的根拠を与え,その実施,充実及び継続のため,そして全ての犯罪被害者が一定レベル以上の支援を受けられるためには,全ての地方公共団体が条例を制定することが不可欠である。
したがって,福井県条例の制定は,犯罪被害者等基本法の実現のため必要であって,極めて有意義である。
(2) 条例の制定過程
前述のとおり,地方公共団体は,地域の住民等の問題やニーズを把握し,地域の特性を生かしながら,きめ細やかな政策を実施することが可能な,住民にとって身近な行政主体である。
したがって,条例の制定にあたっては,各種の支援団体などの意見を十分に聴取し,参考とすべきである。
(3) 条例に求められる支援施策
他の多くの都府県では,既に,犯罪被害者等支援条例が制定されており,犯罪被害者等に対し,日常生活を支援したり,弁護士など専門職の相談をあっせんするなど先進的な取り組みがなされている。
また,公益財団法人日弁連法務研究財団は,2016年12月,犯罪被害者支援条例のモデル条例案を発表しているところである。
そこで,福井県の状況を踏まえつつ,他の都府県の先進的な条例などを参考として,福井県においても,他の都府県と同等以上の支援が受けられるような内容とすべきである。
(4) 条例の実効性を担保する規定の必要性
都道府県は,もっとも住民に身近な地方公共団体である市町村と連携しつつ,犯罪被害者等支援施策を実施していく必要がある。
そのため,都道府県条例で定める支援施策は,概括的なものとなることもやむを得ないと考えられる。
そこで,条例の実効性を担保するための規定が必要不可欠である。
たとえば,他の都府県の条例及び前掲の公益財団法人日弁連法務研究財団が公表したモデル条例案においては,支援団体等の意見を聴いて,犯罪被害者等支援推進計画を策定,公表するなどの規定が設けられている。
このような規定により,条例で規定された支援施策が,犯罪被害者等のニーズを踏まえて具体化され,着実に実施されていくことが期待できる。
以上