会長声明 2013年09月30日 (月)
死刑執行に関する会長声明
2013年(平成25年)9月12日,東京拘置所において1名の死刑確定者に対して本年3回目(6人目)の死刑が執行された。日本弁護士連合会では本年2月12日,谷垣法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し,死刑及びその運用についての情報公開及び全社会的議論が尽くされるまですべての死刑執行を停止することを求めた。
当会としても,昨年,会内に死刑廃止プロジェクトチームを設置し,死刑に関する議論を広めるべく活動を開始し,本年7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催するなど,死刑のない社会を目指した議論を重ねてきた。こうした取組みの中で,冤罪と死刑の関係など,現行の死刑制度に関する様々な問題点が指摘されたところである。
一方,この間,国においては、死刑及びその運用についての情報公開も不十分なものにとどまり,国民的議論を喚起する施策も十分なものとは言い難い。かかる状況において,拙速に死刑を執行したことを容認することはできない。
死刑廃止は国際的な趨勢となっており,死刑存置国58カ国に対し,死刑廃止国は140カ国(10年以上死刑執行のない事実上の廃止国を含む)を数える。日本政府に対しては,国連関係機関から,死刑の執行を停止し,死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう繰り返し勧告がなされている。
わが国では,過去4つの死刑確定事件(いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)の再審無罪が確定しており,死刑判決にも誤判が存在することは明らかである。しかも,今回,死刑執行がなされた死刑確定者は,一審で無期懲役が下されるなど死刑の適用について裁判官の中でも意見が分かれた事例である。また,同確定者は執行時73歳であり,2008年(平成20年)10月に公表された国際人権(自由権)規約委員会総括所見において,死刑執行に対しより人道的なアプローチを取るべきとされた高齢者にあたる。このように本件は特に死刑執行には慎重であるべき事案であった。
当会は,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行を停止することと死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し,死刑制度についての全社会的議論を踏まえたうえで,その抜本的な検討及び見直しを求めるものである。
2013年(平成25年)9月30日
福井弁護士会
会長 島田 広