会長声明 2025年08月28日 (木)
死刑執行に抗議する会長声明
2025年(令和7年)6月27日、1名の者に対し、死刑が執行された。前回の死刑執行から2年11ヶ月後の執行である。
死刑制度は、国家により人間の生命を奪うという非人道的行為であること、EUを中心とする世界の約7割の国々が死刑を廃止又は停止してきており廃止の流れは国際的潮流であること、誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないこと、様々な問題を内包していることは、これまでも当会会長声明などにおいて繰り返し指摘してきたとおりである。
全ての人間に生命についての権利があり、この権利は、誰からも侵されることのないものである。しかし、死刑制度は、生きてはいけない生命を国家がその手で選別する仕組みであり、これは人を殺してはならないという社会規範と相反するものであるばかりか、権力による恣意的な運用の危険を内包しているという点でも、基本的人権の尊重を基調とした近代社会の在り方からして、もはや廃止すべき刑罰制度であるというべきである。
もちろん犯罪被害者や遺族の被害感情に対し真摯に向き合い、十分な配慮をすることも大変重要な事である。しかし、死刑は生命を奪う刑罰であって、誤判の場合、事後的な回復が不可能である。誤った死刑が執行される恐れがあることは、これまでの複数の再審事件が明らかにしているところである。
日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日、本県で開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年(令和2年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。この宣言から既に9年、2020年(令和2年)から5年近くの月日が経過している。この間、同宣言中で死刑廃止とともに提言されていた拘禁刑への一元化は今年実現されている。また袴田事件や本県における福井女子中学生殺人事件等の再審無罪判決が相次いだことにより、再審法改正の議論も活発に行われるようになってきている。さらに2024年(令和6年)には国会議員、学識経験者のほか、被害者団体や宗教家及び警察・検察出身者等の各界の有識者を集めて議論が行われた「日本の死刑制度について考える懇話会」において、現行の死刑制度には問題が多く、現状のままに存在させてはならないという提言がなされている。
このように福井での宣言を受けて、死刑廃止に向けた全社会的取り組みは着実に進んできている。
当会においても、2023年(令和5年)に市民参加の下、「死刑を考える日2023-袴田事件を通して再審について考える-」を開催したほか、会内勉強会、意見交換会を開催し、また、2015年度(平成27年度)に設置された中部弁護士会連合会内の死刑問題検討ワーキンググループにおいても、死刑廃止を考えるシンポジウムや勉強会を行うなど、福井のみならず中部地方の各弁護士会において、より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを着実に進めてきている。
当会は、今回の死刑執行に対して強く抗議し、直ちに死刑の執行を停止して死刑に関する情報を広く国民に公開することを要請し、死刑制度を廃止する立法措置を講じることを改めて求める。
2025年(令和7年)8月28日
福井弁護士会
会長 後 藤 正 邦