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会長声明 2024年08月01日 (木)

最高裁大法廷判決を受けて、旧優生保護法下の強制不妊手術によるすべての被害者に対する全面的被害回復を求める会長声明

2024年7月3日、最高裁判所大法廷は、国に対し、1996年改正前の優生保護法(以下「旧優生保護法」という。)の下で強制不妊手術(優生手術)を受けた被害者等(被害者及びその配偶者をいう。以下同じ。)に対する賠償を命じる判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。旧優生保護法は、1948年に制定後1996年まで存続し、その間に国によって把握されているだけでも約2万5000件の不妊手術が実施されたとされている。本判決は、旧優生保護法の違憲性を一致して認めつつ、除斥期間の適用について判断の分かれていた5件の控訴審に対する上告審であり、この問題について統一的な判断を下したものである。

本判決は、旧優生保護法は、特定の障害等を有する者が不良であり、そのような者の出生を防止する必要があるとする点において、立法目的が立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても正当性を欠く上、目的達成の手段も、特定の個人に重大な犠牲を求める点において、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するものと断じ、旧優生保護法それ自体の違憲性を認めた。また、同種訴訟の下級審判決の一部で請求を棄却する理由とされてきた除斥期間の適用を制限し、国の賠償責任を認めた。本判決は、①優生手術が、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の障害等を有する者を差別し、これらの者に重大な犠牲を求める施策を実施してきたものであって、立法行為に係る国の責任は極めて重大であること、②優生手術に関する規定が削除されていない時期において、被害者等に損害賠償請求権を行使することを期待するのは極めて困難であったのであり、削除後も国は優生手術は適法であるとの立場をとり続けてきたことなどの事情を踏まえ、例外的に除斥期間の適用を制限し、被害者等による権利行使を認めた画期的な判決である。

現状、被害者等の高齢化が進んでおり、被害救済に向けて一刻の猶予もない。本判決が司法府として全面救済が必要とする確定的判断を下したことを踏まえ、国は、速やかに、すべての被害者等に対し、損害賠償や優生手術による偏見差別の解消を含む全面的な被害救済を図るべきである。当会も、旧優生保護法の被害者等が、誰一人取り残されることなく十分な救済が受けられるよう、情報の提供や相談機会を確保するなど、法律家団体として誠実に取り組む所存である。

 

2024年8月1日

福井弁護士会

会長 堺 啓輔

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