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声明・意見書

会長声明 2021年07月01日 (木)

最低賃金額の着実な引き上げを求める会長声明

福井地方最低賃金審議会は、本年8月頃、本県の最低賃金額についての答申を行う予定である。昨年、同審議会は1円の引き上げを答申し、その答申を受けて、福井県の地域別最低賃金額は830円と決定された。

しかし、時給830円で計算すると、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約14万円、年収約168万円にしかならない。この金額では、労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは相当困難であり、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)には不十分である。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大により、経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産、廃業に追い込まれる懸念が広がる中、最低賃金の引上げが企業経営に与える影響等(事業の存続や雇用の維持)を考慮して引上げを抑制すべきという意見もあり、「国民経済の健全な発展」(同条参照)の観点から、その時々の社会、経済情勢も踏まえた判断が求められる。

そのような相反する意見がある中、政府は「我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、更に感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引上げが不可欠である。感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000 円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。」との方針を出した(令和3年6月18日閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2021」)。

そこで、当会は、政府による中小企業への支援策の充実を前提に、昨年度1円の引き上げに留まったことも踏まえ、最低賃金額の着実な引き上げの実施を求める。

 

令和3年(2021年)7月1日

福井弁護士会会長  森 口 功 一

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