会長声明 2026年07月01日 (水)
最低賃金額の大幅な引上げ及び地域間格差の是正等を求める会長声明
福井地方最低賃金審議会は、本年8月頃、福井県の最低賃金額についての答申を行う予定である。
2025年、同審議会は、69円の引き上げを答申し、その答申を受けて、福井県の地域別最低賃金額は1053円と決定された。かかる引上げは、現行方式での最大の引上げ幅であった昨年を超える大幅な引上げであり、これまで最低賃金の大幅な引上げを求めてきた当会の会長声明の趣旨にも沿うものであって、一定の評価に値する。
しかしながら、引上げ後の1053円という賃金水準では、週40時間働いたとしても、月収約16万8000円、年収約202万円にとどまり、不十分と言わざるを得ない。物価高の折、最低賃金だけでは、いまだ労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難であり、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)を遂げることはできない。
さらに、厚生労働省が本年2月25日に発表した「毎月勤労統計調査2025年分結果確報」によると、現金給与総額(事業所規模5人以上)での実質賃金指数は、物価高の影響もあり、前年から1.3%減少し、4年連続での前年比マイナスとなった。名目賃金の上昇が物価高に追いついていない上、イラン情勢の影響による更なる物価高も想定されることから、最低賃金額を大きく引き上げることが肝要である。
また最低賃金の地域間格差が依然として大きく、最も高い東京都で1226円であるのに対し、福井県は1053円であり、173円の開きがある。昨年度と比較すれば、福井県と東京都等都市部の最低賃金の格差は縮小してはいるものの、最低賃金の地域間格差は依然として大きく、福井から都市部へ若者が流出する要因の一つとなっている。都市部への労働力の集中を緩和し、地域の労働力を確保することは、福井県をはじめとした地域経済の活性化には必要不可欠である。各都道府県が単独で格差の是正に取り組むことは困難であり、全国一律の最低賃金制度の実現が望ましい。
他方、最低賃金引上げに伴い負担増となる中小企業への支援も重要である。現在、国は「業務改善助成金」制度による支援を実施しており、申請件数は年間1万6000件を超えている。しかしながら、中小企業経営者からは、助成対象が生産性向上に資する設備投資等の費用に限定されていることや、助成対象経費支払後に補助金が交付されることなどへの批判が多く寄せられており、中小企業への支援策としてこれだけで十分であるとは言い難い。例えば、社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減すること、人件費等の上昇を取引価格に適正に反映させることを可能にするよう、独占禁止法や中小受託取引適正化法を適正に運用することが効果的と考えられる。
政府は2025年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)において、「2020年代に全国平均1500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を続ける」という目標を掲げたが、この間、新たに発足した内閣ではこの目標を継承することに慎重な姿勢を示している。しかしながら、上述のとおり、大幅な最低賃金額の引上げは不可欠であり、抜本的な中小企業対策を実行すれば実現可能であるから、政府はこの目標を堅持すべきである。
よって、本会は、今年度も引き続き、福井地方最低賃金審議会に対して、主体的に、最低賃金の大幅な引上げを図ることを求め、政府に対しては、最低賃金の地域間格差を是正するよう求めるとともに、賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策の改善等について、地方の実情を踏まえ、迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。
2026年7月1日
福井弁護士会
会長 神 田 芳 和