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声明・意見書

会長声明 2024年07月08日 (月)

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

福井地方最低賃金審議会は、本年8月頃、福井県の最低賃金額についての答申を行う予定である。2023年、同審議会は、43円の引き上げを答申し、その答申を受けて、福井県の地域別最低賃金額は、931円と決定された。かかる引上げは、現行方式となった2002年以降最大の引上げ幅であり、最低賃金の大幅な引き上げを求めてきた当会の会長声明の趣旨にも沿うものである。

しかしながら,931円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約16万4000円、年収約196万円にしかならない。この金額では、いまだ労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難であり、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)を遂げることはできないと言わざるを得ない。さらに、近年の極端な円安やロシアによるウクライナ侵攻の影響等により、消費者物価の大幅な上昇が続いていることに照らすと、労働者が安定した生活を送るには、ほど遠い水準というほかない。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためにも、さらに最低賃金額を大きく引き上げることが重要である。

また最低賃金の地域間格差が依然として大きく、格差が是正していないことも重大な問題である。2023年の最低賃金は、最も高い東京都で1113円であるのに対し、福井県は931円であり、182円の開きがある。福井県の最低賃金も上昇しているが、東京都等都市部の最低賃金も同様に上昇しているため、地域間格差は一向に縮まらない。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、福井等の地域経済の活性化には必要不可欠である。

一方、最低賃金引き上げに伴い負担増となる中小企業への支援も重要である。この点、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)や下請代金支払遅延等防止法(昭和31年6月1日法律第120号)をこれまで以上に積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との間で公正な取引が確保されるようにするとともに、社会保険料の事業主負担分の減免などの中小企業支援策を実現することが不可欠である。

本会は、これまでも同内容の意見を述べてきた。上記のように、福井県の最低賃金が引き上げられてきている方向性には賛同するものであるが、その引き上げ額は未だ不十分と言わざるを得ない。

よって、本会は、昨年度に引き続き、福井地方最低賃金審議会に対して、主体的に、最低賃金の大幅な引上げを図ることを求めるとともに、政府に対して、最低賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策の改善等について、地方の実情を踏まえ、迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。

 

2024年(令和6年)7月8日
福井弁護士会
会長 堺 啓輔

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