会長声明 2020年07月01日 (水)
最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明
福井地方最低賃金審議会は,本年8月頃,福井県の最低賃金額についての答申を行う予定である。昨年,同審議会は,26円の引き上げを答申し,その答申を受けて,福井県の地域別最低賃金額は,829円と決定された。
しかし,829円という水準は,1日8時間,週40時間働いたとしても,月収約14万円,年収約168万円にしかならない。この金額では,労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難であり,「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)を遂げることはできない。
一方,新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言とその下での休業要請や外出自粛要請等により,経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産,廃業に追い込まれる懸念も広がる中,非正規労働者をはじめとする最低賃金近傍の賃金で働く労働者は,もともと日々生活するだけで精一杯で,緊急事態に対応できるだけの貯蓄ができていない。したがって,緊急事態の影響下での労働者の生活を守るためにも,最低賃金の引上げは喫緊の課題である。
そして,最低賃金の引上げにより影響を受ける中小企業に対しては,社会保険料の減免措置や補助金制度等の構築を検討し,減税措置や中小企業の生産性を高めるための施策などが有機的に組み合わされるべきである。また,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法をこれまで以上に積極的に運用し,中小企業とその取引先企業との間での公正な取引が確保されるべきである。
さらに,最低賃金の地域間格差が依然として大きく,ますます拡大していることも見過ごすことのできない重大な問題である。全国で最も高い東京の2019年の最低賃金は1013円であり,福井県の地域別最低賃金額とは大きな乖離がある。近時の新型コロナウイルス感染拡大により都市部への一極集中がもたらす様々なリスクが顕在化してくる中,地域間格差の解消は益々重要課題となる。そのためにも,福井県において地域間格差の解消を目指し,一層の最低賃金引き上げを目標とするべきである。
当会は,昨年度も同趣旨の意見を述べたが,根本的な是正には至っていない。
よって,当会は,昨年度に引き続き,福井地方最低賃金審議会に対し,主体的に,最低賃金の大幅な引上げを図ることを求めるとともに,政府に対して,最低賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策や取引条件の改善等について,地方の実情を踏まえ,迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。
2020年(令和2年)6月30日
福井弁護士会
会長 八木 宏