会長声明 2018年06月28日 (木)
最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明
中央最低賃金審議会は、本年7月頃、厚生労働大臣に対し、2018年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。2017年、同審議会は、全国加重平均25円の引き上げ(全国加重平均848円)を答申し、これに基づき各地方最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定されており、福井地方最低賃金審議会は、24円の引き上げを答申し、その答申を受けて、福井地域別最低賃金額は、778円と決定された。
しかし、778円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約13万5000円、年収約162万円にしかならない。この金額では、労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難であり、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)を遂げることはできないと言わざるを得ない。
日本の貧困と格差の拡大は深刻な事態となっている。特に、ひとり親世帯では、相対的貧困率が50.8%と高い数値を示しているところ、非正規労働に従事している割合が多いひとり親世帯の労働者は、最低賃金付近での労働を余儀なくされており、最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻害する大きな要因となっているのである。拡大する格差の解消には、貧困世帯の所得を増やす必要があり、そのためには、最低賃金の迅速かつ大幅な引き上げが必要である。
最低賃金の地域間格差が依然として大きく、ますます拡大する傾向にあることも見逃せない問題である。前記のとおり、福井県の2017年の最低賃金は778円であるところ、最も高い東京都では958円となっており、180円もの開きがあった。地方では賃金が高い都市部での就労を求めて若者が地元を離れてしまう傾向が強く、地方における人口の減少に歯止めがかからないことの一因となっている。地域経済の活性化のためにも、最低賃金の地域間格差の縮小は喫緊の課題である。
政府は、2020年までに全国加重平均1000円にすることを目標としているが、その目標を達成するためには、1年あたり50円以上の引上げが必要であり、その目標を後退させるべきではない。そして、福井県においては、地域間格差の解消を目指し、一層の最低賃金引き上げを目標とするべきである。
なお、最低賃金の大幅な引上げは、特に中小企業の経営に大きな影響を与えることが予想される。最低賃金の引上げが困難な中小企業のために、最低賃金の引上げを可能とするための社会保険料の減免措置や補助金制度等の構築を検討すべきである。さらに、中小企業の生産性を高めるための施策や減税措置などが有機的に組み合わされることが必要である。私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法をこれまで以上に積極的に運用し、中小企業とその取引先企業との間での公正な取引が確保されるようにすべきである。
よって、本会は、中央最低賃金審議会に対して、本年度、全国すべての地域において、少なくとも50円以上の最低賃金の引上げを答申すること、また、福井地方最低賃金審議会には、主体的に、最低賃金の大幅な引上げを図ることを求める。さらに、政府に対して、最低賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策や取引条件の改善等について、地方の実情を踏まえ、迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。
2018年(平成30年)6月28日
福井弁護士会会長 前波裕司