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声明・意見書

会長声明 2020年04月23日 (木)

新型コロナウイルスに立ち向かう人たちを不当な権利侵害から守りぬく会長声明

1 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,世界の多くの国で感染が広がり,日本国内においても感染拡大の一途をたどっています。福井県内においても,本年4月15日には陽性判明者が100名に達し,収束の目途が立っていません。
私たちの誰もが,新型コロナウイルスを「うつさない・うつらない」よう行動するように求められていますが,それぞれに感染リスクを負っており,全ての県民が協力して新型コロナウイルスに立ち向かわざるを得ない状況にあるといえます。

 

2 新型コロナウイルスの感染者は,自らの生命・身体の不安に加え,家族や友人を含め外部との接触を制限される寂しさ,他者に感染させてしまったかもしれないとの自責の念などに苦しみながら,治療に臨んでおられます。感染者の家族や関係者は,自らも発症するのではないかとの不安を感じる中で,必死に感染者を支えています。医療従事者は,私たちの生命・身体を守るため,最前線で昼夜を問わず献身的に新型コロナウイルス感染症の治療や検査にあたっています。その他,個人や事業者を問わず,多くの人たちが,新型コロナウイルスによる危機に直面し,対応を迫られています。しかし,残念なことに,これら新型コロナウイルスにまさに立ち向かっておられる人たちに対する不当な差別,偏見やこれらによる誹謗中傷,プライバシー侵害等の深刻な権利侵害が,日々報道されています。

 

3 県民の皆さんが,新型コロナウイルスへの感染を恐れるのは,自身や家族などの生命・身体の安全を守るために当然のことです。しかしながら,かかる恐れから,新型コロナウイルスの感染者,その家族や関係者,医療従事者その他新型コロナウイルスに立ち向かっておられる人たちに対して,差別,偏見やこれらによる誹謗中傷,プライバシー侵害等の不当な権利侵害を行うことは,決して許されるものではありません。私たち県民に求められていることは,「感染症に関する正しい知識を持ち,その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに,感染症の患者等の人権が損なわれることがないように」(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律4条)することです。「我が国においては,過去にハンセン病,後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め,これを教訓として」(同法前文)対応すべきではないでしょうか。

特定の個人や団体を誹謗中傷したり,いじめの標的にしたりその他不当な差別をしたりする行為は,断じて許されないもので,個人のプライバシーに対する配慮も必要です。誹謗中傷その他不当な差別行為をしたり,みだりに個人情報を拡散したりすることは,民事上の不法行為として損害賠償責任が生じ,名誉毀損,業務妨害等の犯罪行為として処罰の対象にもなり得ます。

 

4 私たち弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命としています(弁護士法1条)。福井弁護士会及びその会員である各弁護士は,弁護士の使命を全うするため,新型コロナウイルスに立ち向かっておられる人たちに寄り添い,全力で支援してまいります。

福井弁護士会は,差別や偏見による不当な権利侵害を許さないためにも,「弁護士無料電話相談」などの法的サービスを提供することにより,新型コロナウイルスの感染拡大により生じた法律問題の解決を支援するとともに,行政機関や各種団体と連携し,県民の皆様に貢献できるよう,今後とも努めてまいります。

 

5 本年4月25日からは,福井県内の事業者に対する休業要請もなされ,SNSなどに触れる機会も増えるのではないかと思われます。いま,私たちがすべきことは,不当な差別や偏見に基づく情報を流したり,拡散したり,新型コロナウイルスに立ち向かっておられる人たちを攻撃することではなく,正しい知識に基づいた冷静な対応です。新型コロナウイルスに立ち向かっておられる人たちが,差別や偏見などの不当な権利侵害を受けることがないように,行政機関などによる配慮が求められることはもとより,県民一人ひとりが,今できることを自覚していきましょう。

 

2020年(令和2年)4月23日 
福井弁護士会
会長 八木 宏
 

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