会長声明 2015年07月23日 (木)
安全保障関連法案の衆議院強行採決に抗議し,同法案の撤回・廃案を強く求める会長声明
1 与党である自由民主党・公明党は,2015年5月15日に国会に提出された平和安全法制整備法及び国際平和支援法(以下「本法案」という。)について,7月15日に衆議院安全保障特別委員会において,さらに7月16日に衆議院本会議において,それぞれ採決を強行した。
2 当会は,同法案について,2015年5月25日付け「安全保障法制改定法案に反対する会長声明」を公表し,同法案は①集団的自衛権行使を可能とするとともに,②自衛隊が地理的限定なく,武力の行使,戦争を遂行する他国の支援,及び停戦処理活動等を広汎に行うことを可能とするものであって,日本国憲法第9条に違反しており,このような法案を憲法改正手続を経ることなく成立させることは,立憲主義の基本理念に真っ向から反すると指摘した。
3 しかるに,6月4日の衆議院憲法審査会において与党推薦も含め参考人となった全ての憲法学者が本法案について「憲法違反」と指摘するなど,衆議院での審議を通じて,同法案の問題点がより一層明らかとなり,しかも,各種世論調査でも本法案に反対又は少なくとも今国会での成立を強行すべきではないとする意見が過半数を占めるなど,国民の間に本法案に対する疑問や批判が渦巻いていたにもかかわらず,採決が強行されたことは,誠に遺憾である。
3 近代立憲主義に立脚する日本国憲法は,国家権力を縛り,国民に基本的人権を保障するための,法律より上位に立つ「最高法規」(第98条)である。
そして,アジア・太平洋戦争の痛苦の経験を経て生まれた日本国憲法が,我が国の国家権力に対して課した最も重要な制約の一つが,「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにする」(日本国憲法前文)ことであり,戦争,武力による威嚇と武力の行使は「永久にこれを放棄する」(同第9条第1項)ということであった。
いま,政府の憲法解釈の変更とそれに即した法律の制定によって,この日本国憲法による国家権力に対する最も重要な制約が事実上骨抜きにされようとしていることは,わが国の憲政史上かつてない,立憲主義の重大な危機といえる。
4 よって当会は,本法案の衆議院での強行採決に強く抗議するとともに,日本国憲法に違反する本法案を廃案とすることを強く求める。
2015年(平成27年)7月23日
福井弁護士会
会長 寺 田 直 樹