会長声明 2016年03月23日 (水)
大津地裁による高浜原発運転差止・仮処分決定に対する会長声明
3月9日、大津地方裁判所は、関西電力高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という)3、4号機の運転を禁止する仮処分決定(以下「本決定」という)を発令した。これを受け、関西電力も、停止中の高浜原発4号機に加え、3号機についても運転停止の手続に入った。2015年4月14日に福井地方裁判所が同原発の運転を差し止める仮処分決定を出したときは、高浜原発は運転を停止していたので、史上初めて、司法判断により、運転中の原発が停止したことになる。
周知のとおり福島原発事故は、人命の喪失を含む、きわめて広範かつ深刻な被害を現在も与え続けている。同様の事態を二度と引き起こしてはならないことは、あまりにも自明である。原発等に対する今日の司法審査は、同事故の教訓を踏まえ、万が一にも同様の事故を起こしてはならないという観点からなされるべきものである。
本決定は、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政に大幅な改変が加えられた後の事案であることを直視し、電力会社において、福島原発事故を踏まえ、原子力規制行政がどのように変化し、その結果、高浜原発の設計や運転のための規制が具体的にどのように強化され、電力会社がこの要請にどのように応えたかについて、主張及び疎明を尽くすべきであるとする一方、原子力規制委員会が電力会社に対して設置許可を与えた事実のみによっては、上記主張・疎明があったとすることはできないと判断した。
それを前提として、二度と福島原発と同様の事故を発生させてはならないとの見地から安全対策を講ずるには、徹底した原因究明が必要であり、電力会社や規制委員会の姿勢が、この点に意を払わないものならば、そもそも新規制基準策定に向う姿勢に非常に不安を覚えること、基準地震動策定の前提となる式が科学的に異論のない公式と考えることはできないこと、耐震性能やその評価の前提となる基準地震動の策定方法について十分な検討がなされたとは認められないこと、津波対策や避難計画を含んだ安全確保についても疑問が残ること等の理由により、差止を認めたものである。
当会は、本決定について、あるべき司法判断の道筋を示したものとして高く評価するとともに、政府及び電力会社各社に対し、本決定の趣旨を尊重し、本決定が指摘した諸点について、確実な安全性が確保されない限り、決して原発を再稼働させないよう求めるものである。
2016年3月23日
福井弁護士会長 寺田 直樹