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声明・意見書

その他 2026年08月13日 (木)

「終戦の日」に当たって、恒久平和主義と基本的人権の尊重、立憲主義の理念の堅持に向けた会長談話

本日、日本は82回目となる「終戦の日」を迎えました。 私たちが住む福井県においても、福井、敦賀の空襲により、多くの尊い命が奪われるなど多大な被害が生じ、街は一瞬にして焦土と化しました。今年は、日本国憲法公布から80年の記念の年です。日本国憲法は、戦争の惨禍に対する深い反省の上に、国民主権、基本的人権の尊重及び恒久平和主義を基本理念として定め、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにするとの国民の厳粛な決意を明らかにしています。福井弁護士会もまた、この郷土の記憶と痛みを忘れることなく、一貫して憲法の基本理念を擁護し、その実現に努めてきました。

 

しかし今、世界に目を向ければ、多くの武力紛争が依然として続いています。国際連合憲章(国連憲章)をはじめとする国際法を無視した武力行使が相次ぎ、国際社会が戦後積み上げてきた「法の支配」の土台が根底から揺るがされる極めて重大な事態となっています。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、イスラエルによるガザ侵攻、中東での武力衝突など、国際法を蹂躙する行為が常態化し、各地の紛争で多くの市民の日常が奪われ続けています。

 

国連憲章は、武力による威嚇及び武力の行使を原則として禁止しており(2条4項)、例外としての自衛権の発動は、同憲章51条が明記するとおり「武力攻撃が発生したこと」を厳格な要件としています。すなわち、客観的な武力攻撃の事実がない段階での差し迫った脅威を口実とした先制攻撃は、国際法上容認できません。先制攻撃の論理を認めれば、世界大戦の惨禍を経て人類が到達した武力行使禁止原則は無力化し、際限のない武力衝突を招くことになるからです。

平和は基本的人権の基礎であり、戦争は最大の人権侵害です。だからこそ、国際法における武力行使禁止原則と、日本国憲法が掲げる恒久平和主義の実現は、人間の尊厳を守るための現実的な「法の支配」として、今こそ重く受け止められなければなりません。

 

ところが、我が国の近年の安全保障政策は、これら憲法秩序と国際法上の原則を法解釈の歪曲によって変質させてきました。 日本国憲法第9条の下で許容される自衛の措置は、我が国に対する急迫不正の侵害に対処するための必要最小限度のもの(個別的自衛権)に限られ、自国と密接な関係にある他国への攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は、憲法上許されないというのが長年にわたる政府の確立した法解釈でした。これを2015年、時の政府は、閣議決定のみでこの憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認しました。さらに、2022年の安保三文書に基づき進められている、いわゆる敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛装備移転の拡大は、憲法第9条が要請する専守防衛の理念を事実上空洞化させるものであり、国際法上禁止されている先制攻撃に繋がりかねない危険性を孕んでいます。法に拘束されるべき行政権が、その時々の政治的要請や安全保障環境の変化を理由として、一内閣の判断で平然と覆してよいものではありません。そのような解釈変更による憲法の理念の変更は、最高法規たる憲法によって権力を縛るという立憲主義の根本を崩壊させ、法の安定性を著しく損なうものです。国の防衛政策や憲法秩序の在り方といった憲法の重大な理念の変更は、主権者たる国民の参画のもと、国民的議論と国会における十分な審議を経て慎重に判断されるべきです。

 

世界に視野を広げ、戦争による市民の苦しみを目の当たりにする今、私たちに必要なのは、かつての日本全体が経験し、そして今世界の市民が直面している戦争の被害を受ける人々の痛みに真に向き合うことです。武力によらない平和の構築に向けて、外交、対話、国際協調、人道支援及び国際法を尊重し、遵守することこそが、日本国憲法の指し示す恒久平和主義の道です。

 

日本弁護士連合会は、昨年12月の人権擁護大会で「戦争をしない、させない 長崎宣言」を採択しました。当会もまた、戦争の被害を受けている全ての市民に深い連帯と哀悼の意を表するとともに、地元福井の法律家団体として、空襲や震災から不屈の精神で立ち上がってきたこの郷土の歩みと平和への願いを尊び、最高法規たる憲法に基づく「法の支配」を守るため、日本国憲法の恒久平和主義、基本的人権の尊重及び立憲主義の理念を堅持し、実現のために今後も市民の皆様とともに全力を尽くす決意です。

 

 2026年8月15日

 福井弁護士会 会長 神 田 芳 和

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