会長声明 2013年03月06日 (水)
「福井女子中学生殺人事件」再審棄却決定に関する会長声明
本日,名古屋高等裁判所第1刑事部は,前川彰司氏(以下,「前川氏」とする。)に係るいわゆる「福井女子中学生殺人事件」再審請求事件の異議審につき,検察官の異議を容れ,2011(平成23)年11月30日に原審(請求審)である名古屋高等裁判所金沢支部が下した再審開始決定を取消し,本件再審請求を棄却する決定を下した。
本件は,前川氏が逮捕以来一貫して無罪を主張してきた一方で,何ら物証がなく,「犯行後に血を付けた前川氏を見た。」とする目撃者の供述のみが証拠とされた事件である。そして,目撃者供述について信用できないとして無罪判決を下した第一審と信用できるとして有罪判決を下した控訴審とで判断が分かれ,最高裁判所で有罪判決が確定した。
原審の決定は,再審請求審において開示された証拠とこれを基にした法医学鑑定を全面的に採用し,第三の刃器が使用された蓋然性を認め,また,犯行に使用されたとされる自動車内から本来あるはずの血痕が発見されていない矛盾を指摘し,さらに,現場状況からうかがわれる犯人像が請求人と著しくかけ離れたものであることなどを認め,確定判決が有罪認定の根拠とした目撃者供述の信用性を否定し,前川氏が犯人であるとする確定判決に合理的疑いが生じたとして,再審開始を認めた。
異議審においても,検察官からは上記の原審決定に対して十分な反論が行われず,証人尋問請求も採用されておらず,再審開始決定を覆す根拠は全くなかった。
それにもかかわらず,この度の決定は,弁護団の提出した新証拠の証拠価値を根拠なく軽視し,「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の無罪推定の基本原則を無視し,請求人側に無罪であることの立証責任を負わせたに等しいものであって,過去の再審無罪事件の教訓が全く生かされていないものと言わざるを得ない。
当会は,これまで無罪を訴え続けてきた前川氏の無実を確信し,再審により無罪を勝ち取る日を目指して本件を引き続き支援する所存であり,弁護団の一層の努力を期待する。
2013年(平成25年)3月6日
福 井 弁 護 士 会
会 長 和 田 晋 一