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声明・意見書

会長声明 2015年04月14日 (火)

高浜原発3,4号機差止仮処分福井地裁決定に対する会長声明

福井地方裁判所は,本日,関西電力に対し,高浜原発3,4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡した。
周知のとおり福井地裁は2014年5月21日,大飯原発3,4号機の運転差し止めを命じる判決を言い渡したが,関西電力や規制委員会は,この判決の重要な指摘,例えば
① 従来と同様の手法によって策定された基準地震動では,これを超える地震動が発生する危険があり,とりわけ,4つの原発に5回にわたり想定した基準地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来していること,
② 地震における外部電源の喪失や主給水の遮断が,700ガルを超えない基準地震動以下の地震動によって生じ得ることに争いなく,これらの事態から過酷事故に至る危険性があること,
③ 使用済み核燃料は,福島原発事故において,実際に起こったよりも重大な被害をもたらすおそれがあったが,原子炉格納容器ほどの堅牢な施設に囲われることなく保存されていること
を真摯に受け止めることなく,高浜原発の再稼働を進め,また設置変更を許可した。
 また,福井地裁判決の後,大津地裁は大飯,高浜原発の運転差止仮処分に関する決定を出したが,同決定は,原発の危険性そのものは福井地裁判決と同様の認識に立ちつつ,そのような危険な原発を,規制委員会が拙速に許可するはずがないという理由で保全の必要性を否定した。大津地裁決定は事実上,規制委員会に慎重な審理を要請したものといえるが,規制委員会は,大津地裁決定の指摘にもかかわらず,安易に高浜原発の設置変更を許可した。
本決定によって,原発裁判史上初めて,原発の運転差止という法的効果が生じたが,これは,上記の経緯を踏まえて,住民の生命・身体に対する危険を未然に防ぐため,司法が積極的役割を果たしたものと評価すべきものである。
本決定は,昨年の福井地裁判決同様,①基準地震動の策定方法が基本的には従前同様のままであることを指摘すると共に,②基準地震動を形式的には若干引き上げつつも,例えば主給水ポンプや外部電源のような極めて重要な設備について,何らの対策をも取っていないことを指弾した。③またこれに加え,福島原発事故において,もし免震重要棟が機能していなかったら更に重大な事態になっていたにもかかわらず,関西電力は免震重要棟が完成しないまま再稼働を進めていることも,重要な点として指摘した。
当会は,2012年7月18日に会長声明を発表し,同声明において,深刻な原子力発電所事故による日本の国土や国民への被害の再発を未然に防止するという観点から,福島第一原子力発電所事故の原因を解明し,その事故原因を踏まえた安全基準について,国民的議論を尽くし,それによる適正な審査によって確実な安全性が確保されない限り,原発は再稼働すべきではなく,それにもかかわらず,確実な安全性が確保されないまま,安易に大飯原発の再稼働がなされたことに抗議した。また,2013年10月18日に福井市で開催された中部弁護士会連合会大会の宣言において,同連合会は,裁判所に対し,原子力発電所をめぐる行政訴訟及び民事訴訟においては,行政庁や事業者の膨大な立証や安全神話を安易に信頼し,行政庁の科学技術的裁量を広く認め,又は原子力発電所の危険性について住民側に過度の立証責任を課したため,行政庁や事業者の主張を追認するだけで,科学的専門性に踏み込んだ十分な審理が行われてこなかったことを真摯に反省し,今後の原発訴訟においては,原告住民側の立証責任の軽減など審理方法の改善を図るよう求めた。
本決定は,当会や同連合会の上記指摘と共通する点を持つとともに,司法に対する国民の信頼を回復させるものであり,高い評価に値するものである。
また,当会は,事業者及び国に対し,同決定の内容,とりわけ,規制委員会による規制基準が緩やかに過ぎ,合理性を欠くと指摘したことを重く受け止め,安全審査及び審査の在り方を抜本的に見直し,大飯・高浜原発以外の原子力発電所についても,前記の当会声明の条件が完全に満たされ,確実な安全性が確保されない限り,その稼働をしないよう強く求めるものである。
2015年(平成27年)4月14日
福井弁護士会
会長 寺田 直樹

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