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声明・意見書

会長声明 2023年07月11日 (火)

最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

長期に及ぶ新型コロナウイルスの感染状況の継続とロシアのウクライナ侵攻のなかで、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している状況である。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、すべての労働者の実質賃金の維持又は上昇が実現される必要があり、そのためにはまず最低賃金額を大きく引き上げることが何よりも重要である。

この間、最低賃金額について、フランス、ドイツ、イギリス、韓国などの諸外国では大幅な引き上げがなされているのであり、わが国でも大幅な引き上げが必要である。

また、最低賃金の地域間格差が依然として大きく、格差が是正していないことは重大な問題である。2022年の最低賃金は、最も高い東京都で時給1072円であるのに対し、福井県は時給888円であり、184円の開きがある。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済が停滞する要因ともなっている。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて有効である。

ところで、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方の間で、ほとんど差がないことが明らかになっている。地方では、住居費こそ都市部より比較的低廉だが、公共交通機関が都市部のように発達していない現状では、移動費が都市部より高コストとならざるを得ない。そもそも、最低賃金は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な最低生計費を下回ることは許されない。労働者の最低生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、都市部と福井との間の最低賃金の格差にも合理性はない。

したがって、福井県における最低賃金額も、都市部並みに大きく引き上げることが重要である。

一方、最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策について、現在、国は「業務改善助成金」制度により、影響を受ける中小企業に対する支援を実施している。しかし、利用件数はいまだ少数である。福井県の経済の主たる担い手である中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように充分な支援策を講じることが必要である。具体的には、社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減すること、原材料費等の価格上昇を取引にきちんと反映することを可能にするように法規制することなどの支援策が有効であると考えられる。

本会は、昨年度も同内容の意見を述べたが、未だ十分な改善は見られない。

よって、本会は、昨年度に引き続き、福井地方最低賃金審議会に対して、主体的に、最低賃金の大幅な引上げを図ることを求めるとともに、政府に対して、最低賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策の改善等について、地方の実情を踏まえ、迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。

 

 

2023年(令和5年)7月11日

福井弁護士会

会長   麻 生 英 右

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