会長声明 2016年12月22日 (木)
政府に労働時間規制強化により長時間労働を早急に是正することを求める会長声明
現在,政府の「働き方改革実現本部」において,長時間労働の是正が喫緊の課題として検討されている。
総務省統計局「労働力調査」によれば,いわゆる正規労働者の平均年間労働時間は,2014年には約2256時間,2015年には約2244時間となっている等各種調査からも明らかなとおり,我が国の労働者は,特に男性正規労働者を中心に,依然として長時間労働となっている実態があり,この間ほとんど改善の跡が見られない。こうした中で,過労死や精神疾患等に関する労災補償請求件数・支給決定件数が高水準で推移する等,労働者の命と健康確保について深刻な状況が明らかになっており,昨今も電通新入社員の過労自死事件が発生する等社会的にも大きな問題となっている。
このような長時間労働が是正されない原因には様々な点があると思われるが,労働基準法等の労働時間規制が十分ではない点が大きいことは否定できない。2014年11月に施行された過労死等防止対策推進法において,国は過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有しているとされている。労働時間規制を強化することは,長時間労働を是正し,労働者の命と健康を守るとともに,家庭生活や社会生活の時間を確保しワークライフバランスを実現することにもなる。
当会は,2015年4月6日付けで「労働時間規制を緩和する労働基準法等の一部を改正する法律案の閣議決定に反対する会長声明を発し,労働時間法制を緩和する高度プロフェッショナル制度の導入に対し,長時間過重労働を助長することになり,労働者の命と健康を害する重大な危険をはらむものとして反対した。その後の長時間労働をめぐる情勢の進展に伴い,早急な労働時間規制の強化,具体的には①労働時間の上限を法律上規制すること②労働者の勤務終了から勤務開始までの時間を相当時間確保することを使用者に義務づける勤務間インターバル規制の導入③使用者の労働時間記録の義務化④労働基準監督官の増員と監督体制の強化を求めるものである。
2016年(平成28年)12月22日
福井弁護士会
会長 海 道 宏 実