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声明・意見書

会長声明 2006年04月25日 (火)

共謀罪新設に反対する会長声明

「共謀罪」の新設を規定する「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」という)は,一旦2004年通常国会で廃案とされたにもかかわらず,2005年特別国会に提出され,今通常国会においても与党から「修正案」が提出され,継続審議されている。

この「修正案」では,構成要件としての団体の活動にかっこ書きで制限を加えているが,あくまで団体の「活動」に着目して限定を加えたものであって,必ずしも「団体」がどこまで限定されているかは明らかでない。団体の一部の構成員が一定の犯罪の共謀を行ったことのみをもって,団体に犯罪目的ありと解釈される可能性がある。

また,この「修正案」では,共謀に加えて,「犯罪の実行に資する行為」が要件とされているが,この概念は,犯罪の準備行為よりもはるかに広い概念であり,犯罪の実行にはさしたる影響力を持たない精神的な応援などもこれに含まれる可能性があり,共謀罪の適用場面において,ほとんど歯止めにならない。

既に当会としては,2005年10月に,「法案」にはもともと下記のような問題点を有しているので,「共謀罪」の新設に反対する旨,会長として声明を出したところである。

すなわち,そもそも「共謀罪」の新設は,「国際的な犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という)を批准するためになされるものと説明されている。そして,条約では,その適用範囲が「性質上越境的なものであり,かつ,組織的な犯罪集団が関与するもの」に限定されている。

ところが,「法案」では,長期4年以上の刑を定めたすべての犯罪について「共謀罪」を新設するため,道路交通法違反など市民生活の隅々にまで及ぶ合計600以上の犯罪類型がその対象とされる。しかも,「法案」の「共謀罪」は,越境性が要件とされていないばかりか,テロや組織犯罪との関連性が乏しい犯罪までが対象とされている。さらに,組織的な犯罪集団の関与も要件とはされていない。これでは,条約批准に伴う国内法整備という範囲を著しく超えたものと言わざるを得ない。

また,これらの結果として,たとえば市民団体がマンション建設に反対して着工現場で座りこみをしたり,労働組合が妥結するまで徹夜も辞さずに団体交渉を続けようと決めるだけで,組織的威力妨害罪や監禁罪の共謀をしたとして処罰されかねない等,市民団体や労働組合,NPO等の活動までもが処罰の対象となるおそれも否定できない。

我が国において,このように広範な共謀罪処罰を必要とする立法事実の存在は到底認められない。

さらに,我が国において,犯罪は,実行行為があって初めて成立し処罰されるのが原則とされており,実行行為のない予備が処罰されるのは極めて例外的である。まして,外形的行為の認められない意思形成段階に過ぎない共謀それ自体は処罰しないというのが我が国の刑法の大原則である。ところが,「法案」では,意思形成段階に過ぎない共謀それ自体を処罰の対象とするものであり,我が国現行刑法の大原則に真っ向から反するものと言わざるを得ない。

加えて,共謀の概念自体が曖昧であることからすれば,「思想及び良心の自由」や「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由」等憲法上規定された基本的な人権に対する重大な脅威となるものである。

そして,以上に述べた問題点は,「修正案」でもほとんど解消されてはいない。

よって,当会としては,「共謀罪」を新設する「法案」のみならず「修正案」にも強く反対し,廃案とすべきものであることを再度声明するものである。

 

2006(平成18)年 4月 25日

福井弁護士会

会長  山川 均

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