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声明・意見書

会長声明 2007年04月27日 (金)

「憲法改正国民投票法案」の慎重審議を求める声明

 「日本国憲法の改正手続きに関する法律案」(いわゆる「国民投票法案」)は、4月13日、衆議院本会議で可決され、参議院で審議されている。
 憲法改正国民投票は、主権者である国民が、国の最高法規である憲法のあり方について主権者としての意見を表明するものであるから、それにふさわしいものでなければならない。しかし、現在参議院で審議されている与党の「国民投票法案」は、修正されたとはいえ、未だ多くの問題を抱えたままである。
 第1に、改正案の発議は、「内容において関連する事項ごと」に区分して行うとされているが、基準が曖昧であり、発議の仕方によっては国民の意思が正確に反映されない危険を有している。国民の意思を尊重するという憲法の趣旨からすれば、むしろ、条文ごとの個別投票が原則とされるべきである。
 第2に、憲法改正の発議から国民投票までの期間を60日以後180日以内としており、最短60日で国民投票が行われることになる。しかし、国民投票は、憲法改正という国政の基本に関わる重大な問題について主権者の意思を問うものであるところ、国民が十分に情報の提供を受け、これを理解し、さらに意見交換する機会が保障されなければならない。そのような観点からすると、法案の定める期間は、余りに短すぎると言わざるを得ない。
 第3に、公務員及び教育者の「影響力」を利用した国民投票運動を広く禁止しているが、このような曖昧な基準は表現行為に萎縮効果をもたらしかねない。
 第4に、メディアにおける有料広告に対する規制のあり方については、財力のない一般市民が意見を表明する権利を実質的に損ねるおそれがあるという重大な問題が存することが否定できず、十分に議論が尽くされたとは言い難い。
 第5に、憲法改正案の広報を行う国民投票広報協議会の構成を所属議員の比率によって選任することから、反対意見が公正かつ十分に広報されないおそれがある。
 第6に、法案は最低投票率を定める規定を置いていない。そうすると、例えば、投票率が40%だった場合には、投票権者の20%の賛成をもって国の最高法規である憲法の改正が認められることになる。しかし、日本国憲法が憲法改正手続において国民投票を定めている趣旨や憲法改正の重要性に鑑みるなら、最低投票率あるいは最低得票率が定められるべきである。
 以上のとおり、現在審議されている国民投票法案には、極めて重大な問題が数多く存する。
 よって、参議院においては、慎重に審議されることを強く求める。

2007年(平成19年)4月27日
福 井 弁 護 士 会
会 長  北  川   稔

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