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声明・意見書

決議 2012年02月22日 (水)

全面的国選付添人制度の実現を求める総会決議

 当会は,国に対し,国選付添人制度の対象事件を,少なくとも,少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件にまで拡大するよう,少年法の速やかな改正を求める。

 1 少年事件における弁護士付添人の必要性
 弁護士は,少年審判手続において,「付添人」という立場で,非行事実の認定や保護処分が適正に行われるよう,少年に法的援助を行っている。
 少年は,成人に比して精神的に未成熟であり,他者に迎合し影響されやすく,また,自分の意思を表現する能力も乏しい。また,非行を犯した少年の多くは,家庭などの環境に問題を抱えているが,自分自身の力だけでは,現在置かれた環境を容易に変えることができない。それゆえ,非行を犯した少年に対する法的援助が必要不可欠であり,弁護士付添人は,えん罪が防止されるよう少年審判手続の適正を図るとともに,少年の内省を深めそれを家庭裁判所に伝え,さらには,家族・職場・学校関係などに働きかけて,少年を取り巻く環境を調整するなど少年の更生に向けた活動を行っている。
 2 現行制度の問題点
このように弁護士付添人は,少年の権利を擁護しつつ,少年の更生を手助けする存在として極めて重要な役割を担っている。しかし,2010年において少年審判を受ける少年に国選付添人(国費による付添人)が選任された事件は,少年鑑別所に身体拘束された少年の約5%に過ぎず,国選付添人が付される事件は極めて少数にとどまっている。
 この原因は,現在の少年法の下では,少年に国選付添人が付されるのは,原則として,殺人・強盗・強姦などの重大事件に限られ,しかも裁判所が必要と判断した場合だけであり,国選付添人の選任範囲が極めて限定されていることにある。これは,成人の刑事裁判では,ほぼ全ての事件について国選弁護人が選任されることと対比すると,著しく不均衡であるといわざるを得ない。
 また,家庭裁判所に送致される前の被疑者段階では,少年も,成人と同じように広く被疑者国選弁護人が付されるが,国選付添人が付される場合は上記のように極めて限定されている。その結果として,家庭裁判所送致前(被疑者段階)では国費による弁護士からの法的援助を受けることができたのに,家庭裁判所送致後は国費による弁護士からの法的援助を受けることができなくなるという事態が生じている。成人の場合は起訴前・起訴後を通じて国費により弁護士からの法的援助を受けられるのと対比すると,極めて不均衡である。
3 弁護士会の取り組み
 このような問題状況を踏まえて,日本弁護士連合会及び全国の弁護士会は,非行を犯した少年の法的援助を受ける権利を保障するため,時限的措置として,全ての会員から特別会費を徴収して「少年・刑事財政基金」を設置し,これを財源として弁護士費用を賄えない少年に私選付添人の費用を援助する「少年保護事件付添援助制度」を実施してきた。
 また,かかる制度を少年が利用できるよう,全国の弁護士会で,観護措置決定により身体拘束を受けた少年の要望があれば,弁護士が無料で少年と面会して助言を行う「当番付添人制度」を実施している。
 こうした日弁連及び全国の弁護士会の取り組みの結果,少年付添人選任率(少年付添人選任事件数/少年鑑別所への身柄拘束件事件数)は,2008年には約40%であったものが,2010年には62%となった。
 当会でも,2008年5月から当番付添人制度を実施し,2010年の少年付添人選任率は96%にまで達している。
4 少年法改正の必要性
  しかし,身体拘束された少年に弁護士付添人による法的援助を与えることは,本来,国の責務である。国が批准している子どもの権利条約37条(d)は,「自由を奪われたすべての児童は,・・・弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しているところである。
 少年への国費による法的援助が,成人に対する法的援助よりも不十分である現状は,国によって,速やかに改善されなければならない。国選付添人の選任範囲を,少なくとも,少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件にまで拡大すべきである。
 よって,上記のとおり,速やかに少年法を改正するように求めるものである。

2012年(平成24年)2月22日
福井弁護士会
会長 安藤 健

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