会長声明 2026年05月25日 (月)
国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を求める会長声明
袴田事件や福井女子中学生殺人事件等、再審無罪判決が相次いでいる。また、プレサンス事件、大川原化工機事件など、冤罪事件は後を絶たない。これらのことは刑事弁護の重要性を如実に示している。2025年7月の「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」報告書でも国選弁護の堅調な利用が確認された。もっとも、国選弁護制度が成り立っているのは、当番弁護を含め、各弁護士会の不断の努力によるところが大きく、当会も会員弁護士からの会費から成る独自予算にて当番弁護士制度等を整備し、当番弁護、国選弁護の体制を整えている現状にある。しかしながら、刑事弁護制度は、市民に対する人権保障のための制度であり、本来、社会全体のインフラであって、憲法第34条及び第37条に基づく国選弁護制度の維持は、弁護士個人や弁護士会の負担ではなく、まずは国費で賄われるべきものである。
現在、国選弁護のための国家予算は171億円前後と100兆円規模の国家予算に占める割合は0.01%台と極めて僅少である。現在の国選弁護報酬は、法テラスが発足した2006年以来、約20年間にわたり実質的に据え置かれている。近年の急激な物価高騰や、弁護士業務のデジタル化に伴うセキュリティ対策等の新たな負担が生じているにもかかわらず、これらが全く反映されていない。実質的な報酬は年々目減りしている現状にあり、極めて不十分であるといわざるを得ない。
福井県においても、福井市の消費者物価指数は、2020年を100として、2006年が95.5であったのに対し、2024年には107.0となっており、現状と合っていないことは明白である。当会は約120名と小規模であり、会員の負担は増大している。特に福井県は南北に長い地形であり、また、冬季は積雪もあり、過酷な状況下で遠隔地接見を余儀なくされることも多いにもかかわらず、起訴後の接見には手当がない。このような状況に鑑みれば、現行の交通費や諸手当は到底十分とはいえない。加えて、現状では、否認事件や外国人事件、公判前整理手続への対応、独自の科学鑑定など、弁護活動の高度化・専門化に伴う多大な労力に対しても、正当な対価が支払われているとはいえない。
実質的な報酬の目減りに加え、経済的負担まで要するとなれば国選弁護の担い手減少は必然的であり、実際に減少傾向にある。つまるところ、国選弁護制度は一部弁護士の献身的努力により辛うじて維持されているといっても過言ではなく、このままでは国選弁護制度の持続可能性自体危ぶまれる。医療が国民に広く保障されているのと同様、重大な権利侵害のおそれがある刑事司法における弁護活動が広く保障されるためには、担い手である国選弁護人に対し、当然あるべき水準の報酬が制定されるべきであることはいうまでもない。
よって、当会は被疑者・被告人の更なる権利擁護と公正な刑事司法制度実現のため、国会、法務省、財務省に対し、国選弁護制度の基礎報酬及び各種弁護費用の抜本的改善を強く求める。
2026年5月25日
福井弁護士会
会長 神田 芳和