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声明・意見書

会長声明 2013年12月04日 (水)

衆議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明

1 本年11月20日,最高裁判所大法廷は,2012年12月16日に施行された第46衆議
院議員総選挙(小選挙区選出議員選挙。以下「本件選挙」という。)について,選挙区間の投票価値の較差が当時最大で2.425倍に達したことをもって,「憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった」としつつ,「憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったものということはできない」「本件区割基準規定及び本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない」旨の判決を言い渡した。 

2 最高裁判所大法廷は,本判決に先立つ2011年3月23日,第45回総選挙において投
票価値の不平等を認め,その主要因である1人別枠方式を含む抜本的改正を求める判決を示していた(以下「2011年判決」という。)。しかし国会は,今回の選挙が施行されるまでのおよそ1年9か月間,抜本的改正はおろか,定数調整すら行わずに選挙が施行された。本選挙は2011年判決が何ら活かされずに行われた選挙であるだけに,選挙無効の可能性を含めて判決が注目されていた。 

3 本判決が,投票価値の較差が違憲状態にあることを認めたことは,2011年判決と同様
であり,当然である。

 しかし,本判決が「憲法上要求される合理的期間」が経過していないとした点には賛成できない。たしかに,この間,未曾有の東日本大震災に対応する必要があったことは否めない。しかし,実際の国会では,2011年判決が求めた新しい選挙区割りとは無関係の定数削減論を絡めた選挙制度改革の議論により紛糾し,制度の抜本的改正はもちろん,0増5減の弥縫策すら間に合わず,結果的に,何ら定数調整のなされないまま本件選挙が施行されたのである。
こうした一連の経過をみれば,民主主義制度の根幹である国民の投票価値について,2011年判決にもかかわらず長期にわたり必要な制度改革がなされなかったことを合理化することは到底できず,本件選挙は明らかに違憲というほかない。
 裁判所には,日本国憲法第81条により違憲立法審査権が与えられており,特に,民意を反映すべき民主主義の過程そのものが歪んでしまっている場合にこれを正すことは、裁判所の重要な責務である。
 投票価値の是正は,国会議員の身分が絡む問題だけに,国会内部で解決することにはもともと困難な面があり,特に2011年判決にもかかわらず違憲状態の解消がなされなかった本件のような場合には,最高裁判所が積極的にメスを入れ,解決の道筋を示すべきだったといえる。
 しかるに,本判決は,曖昧な「合理的期間論」を用いて違憲の選挙を有効としたのであり,最高裁判所が,違憲立法審査権を用いて民主主義の過程のゆがみを是正すべき裁判所としての重要な責務を果たさなかったというほかなく,誠に遺憾である。 

4 同時に,本判決が違憲判決ではなかったことをもって,国会が違憲状態を長期にわた
り放置した責任を免れるものでないことは,いうまでもない。本判決及び2011年判決が認定した違憲状態が今後生じないよう,0増5減のような一部の地方に不利益を押しつけるだけの弥縫策ではなく,抜本的な改革を行って,1票の価値の較差をできるかぎり解消するよう真摯に努力すべきである。

 よって,当会は,国会に対し,抜本的な一票の価値の格差の是正を速やかに行うことを求める。

2013年(平成25年)12月4日
福井弁護士会
会長 島 田   広

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