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声明・意見書

会長声明 2025年07月24日 (木)

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

 福井地方最低賃金審議会は、本年8月頃、福井県の最低賃金額についての答申を行う予定である。2024年、同審議会は、53円の引き上げを答申し、その答申を受けて、福井県の地域別最低賃金額は、984円と決定された。かかる引上げは、現行方式となった2002年以降最大の引上げ幅であり、最低賃金の大幅な引き上げを求めてきた当会の会長声明の趣旨にも沿うものである。

 しかしながら,984円という水準は、週40時間働いたとしても、月収約17万3000円、年収約208万円にしかならない。この金額では、いまだ労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難であり、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)を遂げることはできないと言わざるを得ない。さらに、厚生労働省が本年2月5日に発表した「毎月勤労統計調査2024年分結果速報」によると、現金給与総額(事業所規模5人以上)での実質賃金指数は、前年から0.2%の減少となり、3年連続での前年比マイナスとなった。物価上昇に労働者の賃金上昇が追いついていかず、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金の上昇率はほぼゼロ状態が続いている。大幅な物価上昇が続いている昨今の状況に照らすと、さらに最低賃金額を大きく引き上げることが重要である。

また最低賃金の地域間格差が依然として大きく、最も高い東京都で1163円であるのに対し、福井県は984円であり、179円の開きがある。福井県の最低賃金も上昇しているが、東京都等都市部の最低賃金も同様に上昇しているため、地域間格差は一向に縮まらない。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、福井等の地域経済の活性化には必要不可欠である。

他方、最低賃金引き上げに伴い負担増となる中小企業への支援も重要である。現在、国は「業務改善助成金」制度による支援を実施しており、申請件数は年間2万件程度に増加している。しかしながら、中小企業経営者からは、助成対象が生産性向上に資する設備投資等の費用に限定されていることや、助成対象経費支払後に助成金が交付されることなどへの批判が多く寄せられており、中小企業への支援策としてこれだけで十分であるとは言い難い。例えば、社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減すること、人件費及び原材料費等の上昇を取引価格に適正に反映させることを可能にするよう、法規制の充実と監視行政の充実などが効果的と考えられる。政府は2024年11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定し、「2020年代に全国平均1500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」としており、この目標達成のためにも、充実した中小企業支援策が強く求められる。

よって、本会は、昨年度に引き続き、福井地方最低賃金審議会に対して、主体的に、最低賃金の大幅な引上げを図ることを求めるとともに、政府に対して、最低賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策の改善等について、地方の実情を踏まえ、迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。

 

2025年(令和7年)7月24日

福井弁護士会

会長  後藤 正邦

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