会長声明 2025年02月04日 (火)
速やかに選択的夫婦別姓制度を導入することを求める会長声明
民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めて夫婦同姓を義務付けており、婚姻に際しては、夫または妻のいずれか一方の氏を選択しなければならない。
そのため、婚姻に際し、苦渋の決断をもって姓を変更せざるを得なかった方、法律婚を希望しているのに事実婚を余儀なくされている方が数多く存在している。そして、婚姻の際に改姓するのは約95%が女性であって、改姓による不利益及び負担が女性に偏っており、職業上も生活上も様々な不利益を被っているという現実がある。
夫婦が婚姻するために一方に改姓を強制する現行の民法第750条は、日本弁護士連合会が2024年6月14日付けで採択した「誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議」が指摘するとおり、憲法第13条の自己決定権の保障、憲法第14条の「法の下の平等」、そして憲法第24条で保障される婚姻における人格的自律権の尊重と両性の平等に反している。
この点、国は、1996年2月に法制審議会が選択的夫婦別姓制度を導入する「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申したにもかかわらず、今日に至るまで一度も法案提出をおこなわず、国会での法案審議すらしていない。その間、国連女性差別撤廃委員会から、四度(2003年、2009年、2016年、2024年)にわたり、女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を行うよう勧告を受けている。
なお、旧姓を通称使用しても、金融機関との取引や海外渡航の際の本人確認、公的機関・企業とのやり取り等において多くの困難に直面し、精神的苦痛や実害を受けている。また、通称使用においては、自身の生来の姓である「本来の姓」が、戸籍姓に準じるものとして扱われるに過ぎず、本来の姓を堂々と名乗って活動が出来ないという精神的苦痛が継続する。決して通称使用が認められることで人権侵害の状態が解消されるわけではない。
そして、今日の世論や情勢をみるに、官民の調査において選択的夫婦別姓制度の導入に賛同する意見が高い割合を占め、多くの地方議会においても、同制度の導入を求める意見書が採択されている。
当会は、2010年に「家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明」を発出し、選択的夫婦別姓制度の導入を求めてきた。当会は、「婚姻の自由」や「氏名の変更を強制されない自由」が侵害されている現状を是正し、多様性が尊重される社会を実現するため、国に対し、速やかに夫婦同姓の強制を定める民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入するよう改めて強く求めるものである。
2025年(令和7年)2月4日
福井弁護士会
会長 堺 啓 輔