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会長声明 2017年08月31日 (木)

死刑制度の廃止を含む刑罰制度の見直しに着手しないまま死刑執行を続けることについて抗議する会長声明

 2017年(平成29年)7月13日,2名に対し,大阪拘置所および広島拘置所においてそれぞれ死刑が執行された。金田勝年法務大臣による2度目の執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは11回目で,合わせて19名になる。

 死刑制度は,死刑が人間の生命を奪うという非人道的行為であること,EUを中心とする世界の約7割の国々が死刑を廃止又は停止していること,誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないこと,などの様々な問題を内包していることは,2016年(平成28年)11月25日付け当会会長声明などにおいて繰り返し指摘してきたとおりである。そして,日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日,我が福井県で開催された第59回人権擁護大会において,これまでよりさらに踏み込んで,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年(平成32年)までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。その宣言においては,犯罪被害者・遺族に対する十分な配慮と支援が不可欠であるとしつつも,他方で,生まれながらの犯罪者はおらず,犯罪者となってしまった人の多くは家庭,経済,教育,地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っているという実態があることを踏まえると,人権を尊重する民主主義社会であろうとする我々の社会においては,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を見直す必要があるとして,直ちに公の議論を始めるよう求めている。

 当会においても,2013年(平成25年)7月には市民参加の下,「死刑を考える日2013」を開催し,また,2015年度(平成27年度)に設置された中部弁護士会連合会内の死刑問題検討ワーキンググループにおいても,昨年度は死刑廃止を考えるシンポジウムを富山,愛知,石川の各地で合計3回開催するなど,福井のみならず中部地方の各弁護士会を挙げて,より幅広く死刑廃止に向けた全社会的議論への取り組みを進めてきている。

 このような状況下で,死刑制度とその運用に関する情報の公開が十分になされず,公の議論が何ら行われないまま,死刑の執行が繰り返されていることは,到底容認できない。当会は,死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の見直しに着手しないまま行われた今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑制度についてのさらなる全社会的議論を呼びかけるものである。

 

 2017年(平成29年)8月31日

 福井弁護士会

     会長 川村 一司

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