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会長声明 2017年08月18日 (金)

いわゆる共謀罪法の制定・施行に抗議する会長声明〜自由に考え,議論し,意見表明を行い続けられる社会のために〜

 去る2017年(平成29年)6月15日,共謀罪を新設することを内容とする組織的犯罪処罰法の改正案(以下「共謀罪法案」という)が国会で可決・成立し,同法は同年7月11日に施行された。

 同法案に対しては,国内外からさまざまな問題点が指摘され,当会も複数回にわたり反対の見解を表明した(2016年(平成28年)11月25日付け及び2017年(平成29年)3月22日付け当会会長声明)。国連プライバシーに関する権利の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏も,首相宛書簡の中で「プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性があ」るとの強い懸念を表明した。

 また,様々な指摘にもかかわらず,同法案の本質的問題は修正されなかった。準備行為に着手した時点で処罰するとされるが,その「準備行為」の内容は依然として曖昧であり,実質的には共謀内容に着目することになる。このように,憲法の保障する思想・信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由等の基本的人権に対する重大な脅威となるばかりか,既遂処罰を原則とし,その前段階の未遂や予備等は例外的に処罰する刑法の基本原則を否定するという問題は解消されなかった。依然としてテロと無関係な犯罪まで多数が処罰対象となっており,また,処罰対象となる「組織的犯罪集団」の要件も曖昧であった。政府は,こうした問題点の指摘に対し,国会でも変遷し不明確さの残る答弁しかできず,国連の特別報告者からの質問にも,実質的に回答することはなかった。277もの多数の罪を対象とし,国民の基本的人権に重大な影響を与える法案にもかかわらず,審議時間は衆議院でわずか30時間,参議院では17時間50分に過ぎなかった。

 かかる状況において,衆議院及び参議院で同法案の採決が強行され,とりわけ参議院においては,「中間報告」(国会法56条の3)の制度が濫用され本会議での採決が強行された点で,わが国の議会制民主主義の歴史に重大な汚点を残した。

 当会は,国民の基本的人権を脅かす共謀罪法案が,国会での十分な審議も経ないまま成立を強行され,施行されたことに強く抗議し,今後も同法の改廃を求めていく。

 また,成立した共謀罪法は,その要件の不明確さゆえに市民の基本的人権を不当に侵害し,もしくは市民が基本的人権を行使する上で重大な萎縮効果をもたらしうる。当会は,基本的人権が不当に侵害されることのないよう,日本弁護士連合会,市民団体等と連帯し,市民の基本的人権を擁護し,これが不当に侵害される場合には,当会と所属会員はその擁護のために全力をあげる決意であることを表明する。あわせて,市民各位に対し,同法によって萎縮することなく,これまで以上に,自由に考え,議論し,意見表明を行い続けることを呼びかけるものである。

2017年(平成29年)8月17日

福井弁護士会 会長 川 村 一 司

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