会長声明 2010年03月29日 (月)
家族法の差別的規定改正の早期実現を求める会長声明
選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃を内容とする民法,戸籍法等の法改正は,14年前の法制審答申以来,現在に至るも実現していない。法務省は本年2月19日に民法改正案の概要を政府与党の議員に示したとされるが,その後立法化に向けた進展が見られない。
女性の多くが,現実には婚姻後の夫婦の姓の変更を余儀なくされ,職業上も生活上も様々な不利益を被っている。また,通称使用等の方法により社会生活上夫婦が別姓を使用している家庭も少なからず存在するが,法的根拠がないために周囲の理解を得られにくい状況にある。
夫婦別姓について,同制度導入が家族の崩壊につながるとして反対する意見もあるが,夫婦別姓と家族関係の悪化を結びつける実証的根拠は存在しないし,現在議論されているのは選択的夫婦別姓であって国民全体に夫婦別姓を強制するものではない点でも,説得力に欠ける。逆に,先進国では婚姻後の夫婦の同姓を強制しているのは日本のみである。自己のアイデンティティとして婚姻前の氏を使い続けるというライフスタイルの選択は,憲法に照らし,十分に尊重されなければならない。
2009年9月以降に複数の新聞社により実施された調査ではいずれも,選択的夫婦別姓の導入に賛成の者の数は反対の者の数を上回った。夫婦別姓についての国民的理解も進んでおり,制度導入の障害はないといえる。
また,婚外子の相続分差別の撤廃も国際社会の趨勢である。婚外子の相続分差別は,子自身の意思や努力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり,憲法13条,14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁においても,相続分差別を撤廃すべきであるという意見が何度も述べられている。
さらに,女性にのみに課される再婚禁止期間についても,子の父が誰であるかを確定する困難を避けることがその立法趣旨とされているが,科学技術の発達により父の確定に伴う困難は大きく減り,男女間に差を設けるべき根拠は既に失われている。婚姻年齢の統一も,今や憲法14条から当然に要請されることである。
1993年以来,国連の各種委員会は日本政府に,家族法改正を勧告し続けてきた。とりわけ2009年女性差別撤廃委員会は,家族法改正を最優先課題として指摘し,2年以内の書面による詳細な報告を求め,再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
当会は,今国会において,選択的夫婦別姓の導入をはじめ,家族法の差別的規定の改正が速やかに実現されることを強く求める。
2010年(平成22年)3月29日
福井弁護士会
会 長 黛 千 恵 子