2020年04月07日 (火)
H31.1.8 認知機能が十分でない方への相談援助は? 服部宏和
Q 私は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーをしています。私の担当している方の中に、軽度の認知症もある高齢者の方がいらっしゃるのですが、その方からお話をお聞きする限りでは、消費者金融やカード会社数社に借金があって返済にも苦労しているようです。近所にお住いの親族もなく、私がその方に弁護士さんなどの専門家に相談してみてはとアドバイスしても「相談してもどうしようもないと思う」などとなかなか積極的になっていただけません。私からすれば、弁護士さんなどに債務整理の相談をしたほうがよいと思うのですが、何か良い方法はないでしょうか。
A 債務整理に限らず、法的な問題がある場合、弁護士への法律相談は時期が早ければ早いにこしたことはありません。平成30年1月24日から法テラスにおいて、特定援助対象者(認知機能が十分でないために自己の権利の実現が妨げられるおそれがある方のことをいいます。主に高齢者・障がい者の方が想定されています。)であって、近隣に居住する親族がいないことなどにより、弁護士等の法律専門家のサービス提供を自発的に求めることが期待できない方を援助するため、自立した日常生活及び社会生活を営むにあたり必要な弁護士等による法律相談が実施されています。
この法律相談の特徴的なところは、ご本人が自発的に相談を望まない場合にも、「特定の支援者」の申込みにより、法律相談が可能になるということです。高齢者・障がい者の方の潜在的な法的ニーズ、すなわち、法律的な支援を必要としながら、様々なバリアから、法的サービスの提供を受けることが難しい立場の方々について、少しでも受けやすくしたいとの考えからこのような制度が導入されるに至りました。
従来の法テラスの法律扶助相談は収入等が一定額以下であることが相談を受けるための要件になっていましたが、この新たな特定援助対象者向けの法律相談は、収入等の額に関わらず利用が可能です。ただし、収入等の額が一定基準を超える方については、相談費用をご本人に負担していただくことになります。
また、この法律相談は、原則、ご本人の自宅やご本人が入所されている施設、病院などに弁護士等が出向き相談を受ける出張相談となります また、この法律相談で本人の代わりに相談を申し込める、「特定の支援者」ですが、これについては、地方公共団体又は、社会福祉協議会、地域包括支援センター、介護保険法上のサービス事業者、医療機関(医療ソーシャルワーカーが所属している機関)、などがこれにあたります。対象機関となるか否かご不明な場合には、法テラスにお問い合わせください。
ご相談者の方も、介護保険法上のサービス事業者として「特定の支援者」にあたり得ると思いますので、一度、法テラスにご相談の上、この新たな出張法律相談のご利用を考えられてみてはいかかでしょうか。