2018年06月15日 (金)
H30.3.15 示談と刑事処分 上坂篤
Q:昨年もいろいろなニュースが世間を騒がせました。その中でも,女性議員が秘書に暴行したとか,横綱が力士に傷害を負わせたとかいうニュースが印象深いです。テレビでは,加害者の刑事処分の行方は,被害者と示談できるかにかかっているかのような報道でした。そこで,そもそも示談ってなんですか?また,示談することで刑事処分が変わるのですか?
A: 一般的に,示談とは,民事上の争いに関し,裁判によらずに当事者間の合意によって解決することをいいます。交通事故が起きたときに,当事者間で過失割合,慰謝料の金額やその他の条件を合意し,争いを解決することが典型例です。
他方で,刑事処分とは,国家権力が加害者に刑罰を科する処分です,
では,なぜ,民事上の争いではない刑事事件において示談が出てくるのかと疑問に思うかもしれません。
実は,多くの刑事事件では,民事責任も発生しています。横綱が力士に傷害を負わせた事件では,刑事責任としての傷害罪だけではなく,民事責任として損害賠償責任も発生するのです。
そして,加害者と被害者が示談することで,当事者間の民事責任については,合意によって解決されるということになります。その示談の際には,被害者の被害回復のための示談金を支払うことや,被害者が許すこと等を約束します。
このような示談が成立すると,すでに当事者間では紛争が解決しており,被害者が許しているということになりますので,わざわざ国家権力が介入して,加害者を刑事処分する必要がないのではないか,または刑事処分をするにしても,処分を軽くしてもいいのではないかと判断され易くなるのです。このような理由で,示談は刑事処分に影響を与えることになります。そのため,テレビが示談の有無について報道していたのではないかと思います。なお,示談が成立すれば,必ず,刑事処分がなくなる,または軽くなるというわけではありませんから注意してください。
以上