2016年03月24日 (木)
H28.3.24 自筆証書遺言 上坂篤
Q 私(80歳)は妻に先立たれ,長男家族と一緒に住んでいます。住んでいる不動産は私名義です。県外には次男と長女がいます。居住する不動産を長男に相続させたいと思い,自筆で遺言書を書くことにしました。どのようなことに注意したらよいでしょうか。
A 相談者のように自筆で書く遺言のことを自筆証書遺言と言います。
自筆証書遺言は,遺言者が遺言の全文,日付及び氏名を自書(自分で手書きすること)し,押印して作成する必要があります。自書が要件とされるのは,筆跡により本人が書いたものであることを判定するからです。ですから,ワープロによるものは自書には当たりません。
遺言の内容については,作成者の財産(遺産)を特定し,そのうちどの財産を誰に相続させるのかはっきりと記載するべきです。そして,そのように配分した動機を書いた方が良いです。配分が少なくなる相続人に配慮することも重要です。遺産の配分は愛情の配分であるかのように思われますし,遺留分(法律上保証された相続分)の争いを残しかねないからです。また,訂正する方法も法律で決まっています。
作成した遺言書は,改ざんを防ぐため,封筒の中に入れ,遺言書に押した印鑑と同一の印鑑を使って封印し,信頼できる人に保管を依頼するのがよいでしょう。なお,自筆証書遺言は,相談者の死後,家庭裁判所において検認手続を経る必要があります。
相談者の場合,例えば,先祖代々の土地だから長男に相続させるといった動機を書いたり,預貯金については長男よりも次男や長女に多く配分するといった工夫をするとよいかもしれません。次男や長女の遺留分を侵害するような場合には,その行使方法について書くこともあります。
近年,遺言書の作成件数は増加しているようです。しかし,不備があったり,あいまいな遺言書は,かえって遺産争いの火種となっています。また,自筆証書遺言ではなく公証人役場において作成する公正証書遺言等その他の方式をとるという選択も考えられます。より良い遺言書を作成するためにも弁護士にご相談ください。
以上