2017年03月17日 (金)
H28.12.22 有給休暇の取得理由 河野哲
Q 私は1年前からある会社で働いています。先日、家族旅行のため有給休暇をとりたいと上司に相談したところ「会社が忙しいのに遊びのための休みなど認められない。」と言われました。どのような理由なら有給休暇をとることができるのでしょうか。
A 法律上は、有給休暇をとるために特別な理由は必要ありませんし、会社に理由を告げる義務もありません。
労働基準法第39条は、使用者(会社)の義務として、労働者に対し有給休暇を取得する権利を与え、労働者の請求する時季に有給休暇を取得させなければならないと定めています。もっとも、同法同条は、労働者の請求時季に有給休暇を取得させることが「正常な事業の運営を妨げる場合」には会社に有給休暇取得時季を変更する権利を認めています。
つまり、法は「正常な事業の運営を妨げる場合」以外には有給休暇の取得を会社は拒否できないとし、労働者側の有給休暇取得理由を問うてはいないのです。
では、「正常な事業の運営を妨げる場合」とはどういう場合でしょうか。会社は単に「忙しいから」というだけの理由で拒否できるわけではありません。会社は「客観的状況に照らし合理的に予想される事実に基づいて正常な事業の運営を妨げる」とまで言えてはじめて拒否できるだけです。たとえば年度末等の繁忙期に多数の労働者からの有給休暇取得申入れがあるために不可欠な人手が確保できないことが明らかであるような場合に限られるということです。また、会社には労働者の請求時季に有給休暇が取得できるように配慮する義務があり、できる限り勤務シフトの組み換え調整等により取得を実現すべきと考えられています。更に、元々労働者人員の余剰がなく勤務シフトの組み換え調整等をする余地がないような場合は、会社はそもそも有給休暇取得拒否ができないとも考えられています。
以上のように法律上は、会社に対し有給休暇取得理由を告げる義務はなく、会社が取得を拒否できる場合も非常に限定されています。
もっとも職場の人間関係円滑のためには、理由を告げて会社の理解を得ることがよい場合もあるでしょう。しかし、会社が納得できない取得理由だからといって拒否されるものではありません。
労働者側としては、会社にシフト調整等をする時間的余裕を与えるようできるだけ早期に取得申入れをしたり、休暇中の仕事になるべく滞りがでないよう休暇に向けて自身の担当業務調整をしておく等して、会社の事業運営に配慮しておくことが望ましいでしょう。それでも会社が頑として有給休暇取得を拒否する場合には「何時ならばよいのか」「事業運営にどのような具体的妨げがあるのか」を尋ねたり、同僚や労働組合に相談し口添え協力を求めてみることも考えられます。また、労働問題についての監督官庁である労働基準監督署に相談することも考えられます。
過労により心身に障りが出る事態は、労働者にも使用者にも不幸なことです。有給休暇は、労働者の権利であるとともに、労働者が健全に労働できるようリフレッシュするための労使双方にとって有益な制度です。労働者自身のみならず会社全体のためにも積極的に活用してください。