イベント 2022年03月30日 (水)
第5講 「さるかに合戦」で考える「契約って何?」
カニさん、おにぎりと柿のたねを
取りかえっこしちゃって本当にいいの?
「さるかに合戦」では、カニさんが、サルから「柿のたねを育てれば、毎年、おいしい柿の実がなるよ。」とサルから言われて、自分の「おにぎり」とサルが持っていた柿のたねを取りかえっこします(このような取りかえっこのことを「交換契約」といいます)。ところが、カニさんがいっしょうけんめい柿の木を育てて柿の実が実ると、サルが木に登って、柿の実を食べてしまいます。
カニさんは、おにぎりと柿のたねを取りかえっこするときに、どういう約束をサルとしておけばよかったのでしょうか? カニさんに何かよいアドバイスをしてあげられないか、考えてみましょう。
この問題に取り組む前に、まず、進行役の弁護士からのメッセージを見てください。
(映像:約1分29秒)
それでは、「さるかに合戦」のお話がどのような内容だったのか、次の動画を見て確認しましょう。
さるかに合戦(映像:約4分18秒)
はい、「さるかに合戦」のお話は、わかりましたね。
それでは、まず、カニさんが「おにぎり」と柿のたねを取りかえっこしようと思った理由について、次の(1)から(5)の順に確認していきましょう。
【Q1】カニさんは何を期待していたのだろう?
(1)カニさんが「おにぎり」よりも良い(ねうちがある)と思ったものは?
(2)それを早く手に入れるためにカニさんは何をした?
(3)それはサルにも出来ること?
(4)カニさんは自分で柿の実を取ることが出来る?
(5)サルとカニ、どっちがえらい?
【まとめ】
柿の実を取って食べるために、サルとカニが上手に出来る(得意な)ことと出来ない(不得意な)ことをワークシートの表にまとめてみましょう。
以上の(1)から(5)と【まとめ】の表について、
①まず、自分でじっくり考えて、自分の考えを、どうしてそう思うかも含めて、ワークシートに書きましょう。(目安時間:3分)
②(2人以上の場合)自分の考えをワークシートに書いたら、その意見をお互いに発表しあって、ほかの人の考えを、ワークシートに書きましょう。(目安時間:5分)
③みんなの意見が出つくしたら、次の動画を見ましょう。
【Q1】グループ発表・弁護士コメント(映像:約6分28秒)
では、次に、カニさんが柿の木に実った柿の実を食べるには、どんな約束をサルとしておけばよかったのか、次の(1)から(3)の順に考えてみましょう。
Q2に進むにあたって、次の動画を見てください。(映像:約4分20秒)
【Q2】どんな約束をしておけばよかったのだろう?
(1)サルは、カニさんが育てた柿の木にみのった柿の実を勝手に取って食べてもいいの? そう考える理由は?
(2)あなたがサルだったとして、おにぎりと柿のたねを取りかえるとき、カニさんから「柿の実がみのったら木に登って取ってね。ぼくがもらった柿のたねをぼくが育てるんだから、柿の実は全部ぼくのものだよ。」と言われたら、どうしますか? ことわる? 「わかったよ」と言う? その理由は?
(3)おにぎりと柿のたねを取りかえるときに、カニさんが何と言えば「わかったよ。柿の実がみのったら取ってあげるよ。」と言いますか?「柿の実を取ってくれたら、代わりに☆☆☆☆☆」の☆☆☆☆☆を考えてみましょう。
【まとめ】
「柿の実を取ってくれたら、代わりに☆☆☆☆☆」のように、お互いにとって良いことがある(お互いが幸福になる)約束のことを「契約(けいやく)」と言います。(3)の契約をしたときに、サルとカニにどんな良いことがあるか、ワークシートの表にまとめてみましょう。
以上の(1)から(3)と【まとめ】の表について、
①まず、自分でじっくり考えて、自分の考えを、どうしてそう思うかも含めて、ワークシートに書きましょう。(目安時間:3分)
②(2人以上の場合)自分の考えをワークシートに書いたら、その意見をお互いに発表しあって、ほかの人の考えを、ワークシートに書きましょう。(目安時間:5分)
③みんなの意見が出つくしたら、次の動画を見ましょう。
【Q2】グループ発表・弁護士コメント(映像:約10分12秒)
最後に、契約を守らなければいけない理由について考えてみましょう。
【Q3】どうして契約は守らなければいけないのだろう?
カニさんは、サルと「柿の実を取ってくれたら、代わりに☆☆☆☆☆」という契約をしたので、安心して「おにぎり」と柿のたねを交換しました。ところが、いざ柿の実がみのったら、サルは約束を破って、柿の実を自分で取って全部たべてしまいました。
(1)これは許されることかな? そう考える理由は?
(2)このようなことをサルがしないようにするためには、契約を破ったときのペナルティを考えておく必要がありそうです。もしサルが(1)のようなことをしたら、どんなペナルティをサルに与えるのがよさそうか考えてみよう。
以上の(1)と(2)について、
①まず、自分でじっくり考えて、自分の考えを、どうしてそう思うかも含めて、ワークシートに書きましょう。(目安時間:3分)
②(2人以上の場合)自分の考えをワークシートに書いたら、その意見をお互いに発表しあって、ほかの人の考えを、ワークシートに書きましょう。(目安時間:5分)
③みんなの意見が出つくしたら、次の動画を見ましょう。
【Q3】グループ発表・弁護士コメント (映像:約12分39秒)
「さるかに合戦」について、みなさんに考えてもらうことは以上です。
最後に、この授業のポイントをおさらいしましょう。
(1) 社会において、物を売り買いしたり、取りかえっこ(交換)したり、貸し借りしたりする約束のことを「契約」といいます。物だけではなく労働やサービスも「契約」という取引行為の対象になります。例えば、アルバイトをしたり就職したりするのも「雇用契約」という「契約」です。
(2) 「契約」は、それぞれ得意なことが違う人たちがお互いに協力して、自分ひとりでは出来ないことをなしとげるための道具です。例えば、木登りが得意なサルと柿の木を早く育てるのが得意なカニさんが「契約」という道具を使って協力すれば、サルだけでは出来ないこと、カニさんだけでは出来ないことをなしとげることが出来ます。
(3) その結果、契約という道具を上手に使えば、お互いが契約をする前よりも幸福になることが出来ます。カニさんがサルと「柿の実を取ってくれたら☆☆☆☆☆」という契約をすれば、サルは自分で柿の木を育てるより早く柿の実を食べることが出来ますし、カニさんは、自分では取ることが出来ない柿の実をサルに取ってもらえるので、契約をしないときと比べれば、サルもカニさんも幸福になります。
(4) しかし、それは、お互いが契約を守ることが前提です。カニさんがサルと「柿の実を取ってくれたら☆☆☆☆☆」という契約をして「おにぎり」と柿のたねを交換したのに、サルが契約を守らずに自分ひとりで柿の実を全部たべてしまったら、サルだけが幸福になって、カニさんは幸福になることができません。これは、自分の幸福のために他人を利用する(他人を踏み台にする)ということなので、許されることではありません。
(5) だから、やむを得ない理由もないのに契約を守らなかった人に対しては、なんらかのペナルティが必要です。遠い昔(古代ローマ法の時代)には、そのペナルティは、契約を破った人を「破廉恥者」(ハレンチなやつ)と呼んで、今後は契約することを許さない(社会から「つまはじき」にしてしまう)という厳しいものでした。これは「いじめ」と同じですから近代社会では許されることではありません。そのため、近代社会では、やむを得ない理由もないのに契約を守らなかった人は契約相手が受けた損害を賠償する責任を負うことになっています。この責任のことを「契約不履行(けいやくふりこう)責任」とか「債務不履行(さいむふりこう)責任」などと呼びます。
(6) だから、契約をするときは、契約しないときと比べて、自分はどのように幸福になることが出来るのか、契約相手はどのように幸福になることが出来るのか、きちんと考える必要がありますし、考えるための情報が足りないときには契約相手に尋ねる必要があります。例えば、買おうとしている商品の品質や性能について、契約相手によく確認しないで欠陥商品を高い値段で売りつけられてしまうと、契約しないときと比べて、契約相手だけが幸福になり、自分は幸福になりません。これは、他人の幸福の踏み台にされるということです。他人を自分の幸福の踏み台にしてはいけませんが、自分を他人の幸福の踏み台にさせてもいけません。民主的な社会とは、あなた自身を含む誰もが幸福になれる社会であり、このことを国連SDG’s(持続可能な開発目標)2030アジェンダは「誰ひとり取り残さない社会」と表現しています。契約は、上手に使いこなせれば、そのような社会を作るための非常に便利な道具になります。
【まとめ】弁護士コメント(映像:約7分46秒)
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