2018年03月13日 (火)
H29.12.13 金融商品被害について 野条泰永
Q: 私は,仕事を定年退職し,現在の収入は公的年金のみです。退職金2500万円を老後の生活資金として銀行に預けていましたが,金利が低いことが不満でした。その折,証券会社の人から「年利5%の利率」「元本は満期時に全額償還」というEB債なる商品を勧められました。投資経験は無く,EB債の説明も難しく理解でませんでしたが,金利に魅力を感じ,預金のうち2000万円をこのEB債購入に充てました。ところが,契約後1年ほどで「対象銘柄株式の株価が基準額を下回ったため,元本2000万円は,株式(時価1200万円)によって償還する」という文書が送られてきました。まったく想定していなかった事態です。どうしたらよいでしょうか。
A: 近時,金利の低下や,公的年金の先行きに対する不安といった社会情勢から,「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと,株式現物取引,株式信用取引,投資信託,先物取引,スワップ取引,オプション取引,仕組債など,様々な金融商品に個人が投資するケースが増加しています。
ご相談のEB債は,「他社株転換条項付債券」という金融商品で,いわゆる仕組債の一種です。簡単に言えば,対象銘柄株式の株価が下がらなかったときは満期時に元本を金銭で顧客に戻すものの,対象銘柄株式の株価が下落した時は金銭ではなく(値下がりした状態の)対象銘柄株式が顧客に渡される,という商品です。株価が下落した場合の損失を顧客が引き受ける仕組みであり,リスクの高い商品です。表面上の金利が魅力的とはいえ,大切な老後の生活資金の大部分をこのようなリスクの高い商品に投資すべきではなかったと考えます。
他方,今回のケースでは,証券会社側の勧誘にも問題があります。
証券会社や銀行など金融機関は,金融商品を顧客に勧誘する際,顧客の知識,経験,財産状況,取引の目的に照らして不適当な金融商品の勧誘を行ってはならず(適合性原則),また,商品の仕組みやリスクに関し顧客が理解できるだけの説明を尽くす義務を負います(説明義務)。今回のケースにおける証言会社側の勧誘は,相談者の方の知識,経験,財産状況に照らして適当ではない商品を勧めている疑いがあり,また,EB債の仕組みやリスクの説明を尽くした様子もありません。仮に適合性原則や説明義務の違反が認められれば,顧客は証券会社に対し損害の賠償を求めることが出来ます。
適合性原則や説明義務の違反が認められるかどうかは法的に難しい判断です。金融商品被害を扱う弁護士に相談することをお勧めします。