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2017年04月26日 (水)

H29.1.26 預貯金の遺産分割 安藤健

Q 最近,共同相続された故人の預貯金の扱いについて,最高裁判所が判例を変更したというニュースを見ました。これは,どういうことなのでしょうか。

 

A 故人の財産は,相続人に引き継がれますが,具体的に,誰が,何を引き継ぐかは,遺産分割協議を行って決めることになります。例えば,自宅と預貯金があるような場合,長男が自宅を引き継ぎ,預貯金を外の相続人で分けましょうなどということは話し合いで行われることが多いかと思います。

このときの預貯金の取り扱いについて,最高裁判所は,昨年12月19日に,預貯金も遺産分割の対象とするという考え方を示しました。最高裁判所が判断をした今回の事案は,故人には4000万円の預貯金があったのに対し,相続人の一人が故人の生前に5500万円の贈与を受けていたというものであったようです。

これ以前は,最高裁判所は,預貯金を,遺産分割の対象外としており,話し合いをしなくても,相続人それぞれが,金融機関に対し,自分の相続分を払戻し請求すれば良いという考え方を採っており,上記の事案では,いずれの相続人も,金融機関に対し,2000万円ずつの払戻し請求ができていましたが,この変更により,今後は,金融機関に対し,自分の相続分だけを払戻して欲しいと求めても,応じることはできないという取り扱いになるものと考えられます。

確かに,以前の考え方ですと,贈与を受けた相続人も,そうでない相続人も預貯金は相続分に応じて受け取れますので,不公平感は否めず,今回の判断は,その解消につながりそうです。また,今後は,遺産分割に預貯金を含めることになりますから,預貯金が調整要素として働き,柔軟な解決が可能になると思われます。その意味で,歓迎すべきところもあるのですが,その一方で,遺産に関する問題が解決しない限り,預貯金の払戻しができなくなり,相続人が,故人の生前の入院費の支払いにあたり,遺産をあてにしていたとしても,短期間で払戻しができず,その支払いができないということが起こりうることも考えられます。

この問題を解決するためには,今後は,遺言書を作成し,遺言執行者を指定しておき,遺言執行者が払戻しの請求をするということが,今まで以上に有効になるかもしれません。

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