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ジュニアロースクール福井 2020年12月25日 (金)
第3講 「アリとキリギリス」で考える ものごとの決め方(立憲民主主義)
「アリとキリギリス」で考える
ものごとの決め方(立憲民主主義)
夏の間にせっせせっせと食りょうを貯めたアリの国。
一方、夏を楽しむばかりで冬の備えをしなかったキリギリス。
そんなキリギリスに、アリの国の食りょうを分けてあげるかどうかが問題になりました。
いったい、誰がそれを決めれば良いのでしょうか?
次に、アリの国の中でも、誰にどれだけ食りょうを分ければ良いのかを決めることに。さて、今度は、誰が、どうやって決めれば良いのでしょうか?
ものごとの決め方について考えてみましょう。
では、まず、第1幕の次の動画を見ましょう。
第1幕 女王アリ、みんなの食りょうをキリギリスに分け与える (映像:約3分40秒)
【問1】
優しい女王アリは、キリギリスにも食りょうをあげることにしました。
でも、食りょうをキリギリスに分けてあげるべきかどうか、
他のアリの意見を聞かずに女王アリひとりで決めて良かったのでしょうか?
①女王アリひとりで決めてよいか、ひとりで決めるべきではないか、
自分の考えをワークシートに書きましょう。
また、そう考えた理由も合わせて書きましょう。(目安時間:2分)
② 自分の考えをワークシートに書いたら、その意見をお互いに発表しあって、
他の人の考えを、ワークシートに書きましょう。(目安時間:5分)
③ みんなの意見がまとまったら、それをワークシートに書いて、次の動画を見ましょう。
会場では、どのような意見が出たのでしょうか?(映像:約1分50秒)
それでは、第1問について、弁護士の解説を見てみましょう。(映像:約6分37秒)
次に、劇の第2幕を見てみましょう。
第2幕 みんなの意見はバラバラ・・・ (映像:約2分)
アリたちみんなで物事を決めることになったのはいいけど、
みんなの意見はバラバラです。
○兵隊アリの言い分
「ケンカして、力ずくで決めようぜ!」
○病気アリの言い分
「ジャンケンで決めませんか… ゲホゲホ」
○老人アリの言い分
「年寄りの意見にしたがうべきじゃよ」
○働きアリの言い分
「ボクらにも言いたいことがあるんだけど」
みんなの問題について意見が分かれたとき、
一体、どういう方法で決めるのが良いでしょうか?
① みんなで意見が分かれたとき、ものごとを決める方法としてどんなものがありますか?
自分でいろいろと考えて、それをみんなワークシートに書き出してみましょう
(目安時間:2分)。
② ワークシートに書いた内容を、その意見をお互いに発表しあって、
他の人から聞いた内容を、ワークシートに書きましょう。(目安時間:3~5分)
③ ②であがった決め方のうち、食りょうの分け方を決める方法としては
どれがよいと思いますか?みんなで話し合って意見をまとめて、
ワークシートに書きましょう。(目安時間:8分)
みんなの意見がまとまったら、次の動画を見てください。(映像:約2分10秒)
「物事の決め方」について、弁護士の解説を見ましょう。(映像:約3分10秒)
さらに、劇の第3幕の動画を見てみましょう。
第3幕 病気アリや老人アリは多数決に参加出来ないの? (映像:約2分20秒)
アリたちは、自分たちの食りょうの分け方について多数決で決めることにしましたが、
働きアリは「病気アリや老人アリは多数決に参加してはいけない」と主張していますね。
○働きアリの言い分
「食りょうを集めてきたボクらや、
みんなを守ってくれている兵隊アリさんみたいに、
働いた人だけで多数決をするべきだよ」
○病気アリ・老人アリの言い分
「それじゃあ、私たちは意見が言えないよ」
はたして、多数決に参加していい人と参加しない方が
良い人の区別をつけるべきなのでしょうか?
①多数決に参加する人と、参加しない人の区別をつけるべきなのでしょうか?
自分でじっくり考えて、その自分の考えをワークシートに書きましょう
(目安時間:3分)。
② ワークシートに書いた内容を、その意見をお互いに発表しあって、
他の人から聞いた内容を、ワークシートに書きましょう。(目安時間:5分)
③ ②であがった考え方のどれが最も良いと思いますか?みんなで話し合って
意見をまとめて、ワークシートに書きましょう。(目安時間:8分)
会場ではどんな意見が出たでしょうか?
みんなの意見がまとまったら、次の動画を見てください。(映像:約3分10秒)
第3問について、弁護士の解説を見ましょう。(映像:約2分40秒)
さあ、お話はいよいよ最後の場面を迎えます。
劇の第4幕の動画を見てみましょう。
第4幕 多数決はしたけれど・・・(映像:約3分10秒)
次のようにパンを分けることにしました。
・働きアリと兵隊アリ 1日6枚
・老人アリ 1日2枚
・病気アリ 1日1枚
しかし、病気アリは、1日1枚だけのパンでは
死んでしまうかもしれないと言っています。
○働きアリ・兵隊アリの言い分
「多数決でうまく決まったから、これでいいよね」
○老人アリの言い分
「1日2枚で十分じゃから、ワシはこれでいいんじゃ」
○病気アリの言い分
「1日1枚しかパンをもらえないのでは、
病気が治らないし死んじゃうかも知れない!
せめて3枚欲しいよ…」
病気アリも含めたみんなの多数決で決めた結論なのだから
「正しい」と言ってしまって良いのでしょうか?
①病気アリに1日1枚しかパンを分けないことが決まりましたが、
みんなの多数決で決めた以上は「正しい」と言い切って良いでしょうか?
自分の意見と、そう考えた理由を、ワークシートに書きましょう。(目安時間:3分)
②ワークシートに書いた内容を、その意見をお互いに発表しあって、
他の人から聞いた内容を、ワークシートに書きましょう。(目安時間:5分)
③みんなで話し合って意見をまとめて、ワークシートに書きましょう。
(目安時間:10分)
さて、会場では、どんな意見が出たのでしょうか?
みんなの意見がまとまったら、次の動画を見てください。(映像:約4分20秒)
多数決で決めるならばどんな内容の決定をしても良いのか?という
第4問について、弁護士の解説を見ましょう。(映像:合わせて約7分40秒)
※解説中に出てくる衆議院選挙とは、2012年12月に行われたもののことです。
「アリとキリギリス」の物語は、以上です。
最後に、この授業のポイントをおさらいしましょう。
(ポイント1)
私たちの社会の中では、何かを決めなければならないということが起こります。そのような問題があるときに、「王」のような権力のある人がひとりで決めるということが、昔はよく行われていました(絶対王政)。
しかし、今では、社会のみんなに関係する問題は、その社会の人たちが参加して決定する仕組みが望ましいと考えられています(民主主義)。
(ポイント2)
社会のみんなの意見が分かれるとき、その「決め方」には、いろいろな方法があります。暴力で決めるのは論外ですが、一見公平に見える「じゃんけん」も、大事なことを決めるときにはやはり問題です。
「多数決」という方法は、多くのみんなの考え方を反映することができる方法として非常に良い方法であり、実際に国や社会の中で広く採用されています。
(ポイント3)
民主主義や多数決が国の制度になってからも、昔は、たくさん税金を払った人や身分のある人など、一部のだけがそこに参加できるような仕組みになっていました。しかし、その後だんだん、社会全体の人たちがその多数決や選挙に参加することができるような仕組みに変わってきました。社会の問題を決めるときには、社会の中でより弱い立場の人たちの意見も反映させるのが公正だからです。
(ポイント4)
多数決を行う場合は、ただ単に、賛成・反対などの表決を行えば良いというものではありません。意見が分かれるということは、それぞれの意見に、良い点や、何かしら問題点があるものです。したがって、多数意見も少数意見もいずれもしっかりと意見や質問を述べ合うことが必要です。この議論を行うからこそ、多数決がみんなにとって有効な決定方法になります。
(ポイント5)
多数決で決めれば全てその結果にしたがわなければならないか、というと、実はそうではない場合があります。それは、その多数決が、一部の少数派の人たちの人権を不当に侵害している場合です。多数決から人権を守るために、私たちの社会では、憲法を定めています。
私たちの社会では、人権を守るために、国会の多数決でつくる法律なども憲法によって制限することにしています(立憲主義)。
私たちの社会の民主主義(多数決)は、この立憲主義と組み合わさった、立憲民主主義である必要があります。
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