弁護士の活動

声明・意見書

非弁行為を行った者に対する有罪判決についての会長談話

本日、福井地方裁判所は、福井市内において探偵業を営んでいた者(以下「本件被告人」という。)に対し、弁護士法違反及び恐喝未遂罪が成立するとして懲役2年6月、執行猶予5年の有罪判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。
本判決の事案は、本件被告人が探偵業を営んでいた当時、夫の不貞についての調査等の依頼を受けた際に、夫の不貞相手である女性に対し、脅迫し、多額の慰謝料の支払いを内容とする示談書を締結させたというものである。

弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関する法律事務を業としてすることはできない旨(非弁行為の禁止)を定めているが、本判決は、本件被告人が依頼を受けて、不貞相手の女性と示談交渉を行ったことについて、弁護士法第72条に違反するとした。

弁護士法第72条の趣旨は、弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、広く法律事務を行うことをその職務とするものであって、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなどしているが、このような資格もなく、何らの規律にも服さない者が、自らの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入すれば、当事者その他の関係者らの利益を損ね、法律生活の公正円滑な営みを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、かかる行為を禁圧することにあるとされている(最高裁大法廷昭和46年7月14日判決参照)。

本件被告人は、弁護士資格がないにもかかわらず、示談交渉を行ったものであるが、その交渉過程では、交渉相手に対して脅迫が用いられ、締結された示談書には不当な内容の条項が含まれており、一方、本件被告人に調査を依頼した妻も、本件被告人による違法行為に巻き込まれ、かつ、不当な対価を支払う結果となるなど、弁護士法第72条の趣旨である関係者の利益や法律生活といったものが著しく害される事態が生じたものであり、当会としても強く非難する。

当会は、かねてから本件被告人が非弁行為を行っている可能性があるという情報に接し、調査を進めるとともに、福井県警察に対して、情報提供を行っており、かかる当会の活動が本判決につながったという経緯がある。

当会は、今後も非弁行為を座視することなく、非弁行為に対して断固たる対処をしていく決意であることを表明するとともに、市民の皆様に対して、引き続き基本的人権の擁護と社会正義の実現のために質の高い法的サービスを提供していくことを誓う次第である。

 

2021年(令和3年)3月23日

福井弁護士会

会長 八木 宏

2021年03月23日

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