弁護士の活動

声明・意見書

内閣府消費者委員会の消費者庁移管について慎重な審議を 求める会長声明

1 報道によれば,2014年(平成26年)11月13日,自由民主党行政改革推進本部において,「内閣官房・内閣府のスリム化について(案)」がとりまとめられ,同年12月26日,有村治子行政改革担当大臣は,同案を踏まえた法案を今通常国会に提出することを表明したとされる。同案には,内閣府の消費者問題・食品安全機能を消費者庁に移管することが含まれ,この移管の主な対象は消費者委員会であると考えられていることから,消費者委員会の消費者庁移管に関する法案が通常国会で審議される可能性が高まっている。

2 しかしながら,消費者委員会を消費者庁へ移管することには,消費者行政全般を大きく後退させるのではないかとの重大な懸念がある。
 そもそも,消費者庁は,2009年(平成21年)9月,①従前の縦割り消費者行政の弊害除去,②消費者利益の確保と産業保護育成機能の分離等を目的として,我が国全体の消
費者行政を一元化し,その司令塔としての機能を期待されて新設された。
 他方,消費者委員会は,同庁新設と同時に,消費者庁に対する監視機能と各分野の消費者行政に関する調査・政策提言機能等を果たすために,消費者庁とは独立の地位を付与されつつ協力関係の下,活動を継続してきた。
 その後これまでの約5年間,消費者委員会は,独立行政法人国民生活センターの分割統合問題,特定商取引法の指定権利制に関する問題,地方消費者行政の充実強化等,様々な重要論点について意見を表明してきた。これらの消費者委員会の意見表明を契機として,各論点についての透明で活発な議論が民主的に行われ,消費者行政全体の質の向上につながったケースも少なくない。
 また,消費者行政全体の司令塔として機能すべき消費者庁が,実情としては他省庁と横並びの関係ゆえに他省庁の所管分野について改善を求めることに困難を抱える中で,消費者庁とは独立の地位にある消費者委員会は,他省庁に対し,各所管分野に消費者問題が多発している場合には,その法規制並びにその運用実態,被害実態等について詳細な報告を求め,その報告に基づいて制度や運用の改善を求める建議等の政策提言を行うことがなされてきた。消費者行政の司令塔としての役割は,消費者庁と消費者委員会の協働関係によって初めて果たされてきたといえる。

3 こうした消費者委員会の重要な役割に鑑みれば,その事務局体制の整備や所管大臣の見直し等,より一層の機能強化・独立性強化こそが望まれる。しかるに,消費者委員会が消費者庁に移管され,その一審議会に位置付けられることになれば,消費者庁に対しての監視・提言機能のみならず,他省庁に対しての監視・提言機能が大きく抑制されてしまうおそれが極めて強い。

以上の理由により,当会は,国に対し,今後の内閣府のスリム化の議論を進めるに当たっては,消費者委員会の重要性に十分留意した上で,その機能を低下させることのないよう,慎重な審議を求める。

2015年(平成27年)1月19日
福井弁護士会
会長 内 上 和 博

2015年01月19日

会長声明