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声明・意見書

最低賃金額の大幅な引き上げを求める会長声明

福井地方最低賃金審議会は、本年8月頃、福井県の最低賃金額についての答申を行う予定である。2021年、同審議会は、28円の引き上げを答申し、その答申を受けて、福井県の地域別最低賃金額は、858円と決定された。

 

2020年の最低賃金の引き上げ幅が1円であったことに照らせば、2021年は大幅な引き上げが行われた。しかし、858円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約15万円、年収約180万円にしかならない。この金額では、いまだ労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難であり、「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法第1条参照)を遂げることはできないと言わざるを得ない。さらに、ロシアのウクライナ侵攻や構造的な円安の影響もあり、食料品や光熱費など生活関連品の価格が急上昇している。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためにも、最低賃金額を大きく引き上げることが重要である。

 

また最低賃金の地域間格差が依然として大きく、格差が是正されていないことは重大な問題である。2021年の最低賃金は、最も高い東京都で1041円であるのに対し、福井県は858円であり、183円の開きがある。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が縮まるどころか、むしろ拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での人口一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて有効である。コロナ禍で地域経済が疲弊している今こそ、最低賃金の引き上げによって地域経済を活性化することが求められている。

 

一方、最低賃金引き上げに伴う中小企業への支援策について、現在、国は「業務改善助成金」制度により、影響を受ける中小企業に対する支援を実施している。しかし、中小企業にとって必ずしも使い勝手の良いものとはなっておらず、利用件数はごく少数である。わが国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように充分な支援策を講じることが必要である。諸外国で採用されている社会保険料の事業主負担部分を免除・軽減することによる支援策が有効である。

 

政府も、最低賃金の全国平均が2025年度にかけて1000円以上となることを目指す方針を掲げており、上記最低賃金引上げの流れは政府の方針にも沿うものである。

 

本会は、昨年度も最低賃金の着実な引き上げを求める旨の意見を述べたが、未だ十分な改善は見られない。

 

よって、本会は、昨年度に引き続き、福井地方最低賃金審議会に対して、主体的に、最低賃金の大幅な引上げを図ることを求めるとともに、政府に対して、最低賃金の引上げに取り組む中小企業に対する支援策の改善等について、地方の実情を踏まえ、迅速かつ効果的な施策を講じることを求める。

 

令和4年(2022年)6月24日

福井弁護士会会長  紅 谷 崇 文

2022年06月24日

会長声明