会員執筆記事

H29.8.9 結婚式場の高額キャンセル料 野条泰永

Q 結婚式及び披露宴を行なう予定で9か月先の日程を定めて結婚式場と契約をしたのですが,急遽海外転勤が決まったため,契約をキャンセルしました。キャンセル自体は受け付けてもらえたのですが,「申込者側の事情で契約がキャンセルされた場合,違約金は契約金額の80%とする」と契約書に記載されていたため,式場側から契約金額の80%を支払うよう請求されました。式場側の請求どおりの違約金を支払わなければならないでしょうか。

A.契約が有効に成立した後に,相談者側の事情で事後的に契約をキャンセルしたということですから,契約条項に基づく違約金を支払う必要はあると考えます。しかし,式場側が主張する「契約金額の80%」という違約金は高額にすぎるため,そのまま支払うことは相当ではありません。

消費者(相談者)と事業者(式場側)の間で締結された契約には,消費者契約法という法律が適用されます。消費者契約法では,契約キャンセルに伴って消費者から事業者に支払うべき違約金が契約条項で定められていても,当該違約金が解除の理由や時期などの区分に応じて事業者の“平均的な損害”を超える場合は,違約金の定めのうち“平均的な損害”を超える部分は無効になると規定されているためです。

ご相談の事案に照らして言えば,相談者が契約をキャンセルしたことに伴って式場側に生じる“平均的な損害”としては,結婚式で使う装飾品の購入費や,披露宴の料理を準備する材料費,結婚式及び披露宴を運営するための人件費等が想定されます。あるいは,他の予約を断わったことで営業の機会を失ったという逸失利益も想定できます。

しかしながら,ご相談の事案では,予約した日程まで9か月を残した時期に契約をキャンセルしています。そうしますと,式場側としては,先ほど述べた装飾品の購入費や料理の材料費,人件費等を支出する前段階だったと考えられますし,キャンセル後に別のイベントの予約を新たに受け付けて営業の機会を得ることも可能と考えられます。したがって,このケースの解除の理由や時期の区分に応じて式場側に生じる“平均的な損害”を考えますと,到底契約金額の80%もの金額には至らないといえます。

ご相談のケースでは,式場側から請求された違約金全額を支払うのではなく,消費者契約法の規定を指摘したうえで,違約金の減額を申出るべきと考えます。

日刊県民福井

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