会員執筆記事

H29.5.18 発達障害 島田広

息子がなかなか定職につけず…

Q 三〇歳の息子が、仕事が嫌いなわけではないのですが、いつも短期間で仕事をやめてしまい、なかなか定職につけません。最近、万引き事件を起こし,ショックです。

A こうしたトラブルの原因にはいろいろありますが、中には発達障がいの問題がその背景にある場合もあります(もちろん皆さんがそうというわけではありません。)。そこで、①生育歴(いじめ、忘れ物、不器用さ等)、②生活状況(職場や家庭のトラブル、部屋の散らかり具合等)、③感覚過敏の有無などの情報から、「発達障がい」の疑いがないかをチェックすることが有効な場合があります。

発達障がいは、脳の機能の一部に特性があり、それにストレスなどの環境的要因が加わることで生じる障がいで、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠陥・多動性障がい)、学習障がいなどがあります。文部科学省の調査で、発達障がいが疑われる児童生徒の割合は約六・五パーセントと、珍しい障がいではありません。優れた能力を発揮する人も多く、アインシュタインも発達障がいがあったといわれています。社会性、コミュニケーション、想像力に障がいがある(ASD)、衝動性が強い、注意力に欠陥がある(ADHD)などの特性のためにトラブルにあいやすく、支援を受けなければ、ご相談の息子さんのように、仕事がなかなか続けられない場合もあります。 発達障がいそのものが、万引きなどの反社会的行動を引き起こすわけではありません。ただ、支援が受けられない状態が続くと、過大なストレスにより、精神障がいや人格障がいなどの二次障がいを起こし、それがまれに反社会的行動につながることもあります。 発達障がいが疑われる場合、福井県発達障害児者支援センター(スクラム福井)等の福祉機関の協力を得て、適切な医療・福祉が受けられるようにすることで、ご本人やご家族の困った状態が改善できる可能性があります。 最近の障がい者関連の法改正の中で、障がいはご本人だけの問題ではなく、社会の側の対応の不備が引き起こすという「社会的障がい観」が採用され、障害のある人が暮らしやすい社会づくりが求められるようになりました。弁護士も、そのお役に立てればと思っています。困ったときには、お一人で悩まずに、福井弁護士会(電話〇七七六-二三-五二五五)またはスクラム福井(電話〇七七六−二二-〇三七〇)まで、ご相談ください。

福井新聞

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