弁護士の活動

声明・意見書

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

経済産業省及び農林水産省は,2015年(平成27年)1月23日,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下,「本省令」という。)を定めた。
当会は,2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則に対し,同月30日付け会長声明において,これに反対する意見を表明してきた。本省令は,当初の公表案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,顧客が65歳未満で一定の年収若しくは資産を有する者である場合に,顧客の理解度を確認するなどの要件を満たした場合を例外とする規定を,不招請勧誘(顧客の要請をうけない訪問・電話勧誘)の禁止の例外として盛り込んだものである。
しかし,本省令は,実質的に不招請勧誘を解禁するものであり,消費者保護の観点から,重大な危険をはらんでおり,到底容認できない。

そもそも商品先物取引においては,長年にわたって多くの深刻な消費者被害が発生し,度重なる行為規制強化の下でもなおトラブルが解消しなかったため,与野党一致の下,2009年(平成21年)7月に法改正の上,不招請勧誘の禁止が導入された経緯がある。
そして,商品先物取引法及び同法に基づく政令により禁止されている不招請勧誘行為について,省令で禁止の対象から除外することが許されるのは,「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為」(商品先物取引法214条第9号括弧書き)に限られている。
ところが,本省令は,65歳未満の消費者に対する商品先物取引業者による電話・訪問勧誘を事実上解禁しようとするものであり,委託者の保護に欠け,法律の委任の範囲を超えた違法なものである疑いが大きい。すなわち,委託者に年収や資産の確認の方法として申告書面を差し入れさせたり,書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は,いずれも,現在も多くの商品先物取引業者が事実上同様の手法を採っており,その中で業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正答を教授するなどの行為が蔓延し,被害が生じていることからすると,これらの手法が委託者保護のために機能するものとは評価できない。
また,本省令は,市場活性化の観点から定められたとされているところ,本省令は,一般消費者の生活基盤である預貯金を極めてリスクの高い投資に向かわせ,同時に,詐欺的投資勧誘を行おうとする悪質な事業者に格好のツールを提供する結果となって,再び商品先物取引被害が社会問題化する危険性が高く,市場の活性化どころか,不健全な市場をもたらすことにもなりかねない。

本省令はかかる立法経緯及び被害実態を軽視し,商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するものであり,消費者保護の観点から許容できず,当会はこれに強く抗議する。

2015年(平成27年)1月29日
福井弁護士会
会長  内 上  和 博

2015年01月29日

会長声明