会員執筆記事

H31.2.21 インターネットによる名誉毀損に対する対処 清水孝行

Q

インターネット上の掲示板に自分の社会的評価を低下させるような書き込みがされています。書き込んだ者が誰かは見当がつくのですが,その人が書き込んだとわかる形跡は見当たりません。どのような対処が考えられますか。

A

現代では,誰もがインターネットを通して掲示板などに自由に書き込むことができ,不特定多数の人がこれを閲覧することができます。インターネットは,我々にとって,もはや不可欠な情報伝達手段ではありますが,御承知のように,これを悪用して特定の人物等の評価を低下させる記載も数多く存在します。

今回のように,特定の人の社会的評価を低下させる事実関係がインターネット上の掲示板に記載された場合,内容によって,刑事的には名誉毀損罪(刑法第230条1項)が成立し,民事的にも不法行為(民法709条)による損害賠償が認められる可能性があります。しかし,一般的に,書き込みがされた掲示板だけを見ても,どこの誰が書き込みをしたのか不明ですので,まずはその相手を特定する必要があります。

書き込みの内容が刑罰に触れる場合,即座に刑事告訴を行い,犯人の特定も含め,警察による捜査に任せることも考えられますが,刑事告訴が違法な書き込みの削除等に直接つながるわけではありません。そこで,自ら書き込み相手の特定を求める場合,書き込みがされた掲示板の運営者,管理者等に対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,発信者のIPアドレス,書き込み日時,アドレスといった,発信者情報の開示を求めることができます。もし,運営者側が任意の開示に応じない場合,裁判所に対して申立てを行い,強制的に開示を求めることも可能で,これら手続きにより得られた情報を基に,発信者の氏名・住所等を特定していきます。そして,発信者が特定できた場合には,その者に対して,刑事告訴,損害賠償請求,謝罪広告の掲載等(民法723条)を求めることが可能です。

また,上記手続きに並行して,その掲示板の規約や業界団体が作成したガイドラインに基づき,プロバイダ等の管理者に対し,書き込みの削除を求めていくことができます。この求めに任意に応じない場合には,やはり裁判所の手続によって強制的に削除を求めていく必要があるでしょう。

このように,一度インターネット上に名誉を毀損する書き込みがされ,管理者も自ら削除等しない場合には,名誉毀損者に対する責任の追及,あるいは書き込みの削除等に相応の労力が必要となります。どういった対応が可能か判断するためにも,まずは,書き込みがされた掲示板のコピーやデータを確実に保管し,速やかに対応のできる弁護士に相談することをお勧めします。

福井新聞

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