会員執筆記事

H30.7.19 従業員に対する損害賠償請求と給与との相殺 前田裕美子

Q 私は、従業員3名の小さな会社を営んでいます。先月、従業員の一人が、ふざけて、会社の玄関にあった買ったばかりの花瓶を割ってしまいました。もうすぐ、給料日がやってきますが、その従業員の給料から花瓶の購入費用を差し引くことはできないのでしょうか?

 

A  今回、従業員がふざけて会社の花瓶を割ったことについて、会社は従業員に対し、損害賠償を求めることができますが、一方的に給与から差し引くことはできません。給与は、従業員にとっての生活の糧であり大切なものです。そのため法は、会社に対し、給与は全額確実に従業員へ支払うよう求めています。今回のように、会社が従業員に対し損害賠償を請求できる場合であっても、給与から差し引いて、一方的に給与を減額することは、法律上許されていません。

  他方、会社と従業員とが合意をして給与から差し引くことはできます。しかし、その場合でも、従業員にとって自由に意思決定ができる環境のもとで行われる必要があります。つまり、後になって、従業員が無理やり合意書にサインをさせられたなどと言い出せば、給与から差し引いたことが違法となってしまうおそれがあるのです。そのため、会社には、従業員への丁寧な説明と対応が求められます。

  また、今回、従業員に対し請求できる金額についてですが、従業員が仕事と全く関係がなく、文字通り、ふざけて花瓶を割ったような場合には、花瓶の評価額相当を請求することができます。今回の場合は、購入したばかりということですので、花瓶の購入費用を請求することができるでしょう。しかし、従業員の行動にそれほど悪質性がないような場合には、全額の賠償を求めることができないこともあります。いくら請求できるかは、具体的事情によって異なりますので、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

福井新聞

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